研究課題
基盤研究(B)
あらゆる臓器の生存、恒常性維持に血管は必須である。発生過程にこの血管ネットワークが張り巡らされる過程は、極めて秩序だったプロセスを以て進行する。教科書的にこの過程は、①脈管形成、②血管新生、③リモデリングという3つの素過程に分け、説明される。しかしながら、臓器によって異なる血管パターニングの多様性がいかにして獲得されるかは、この3つのステップでは説明できず不明である。本研究は、解剖学・細胞生物学・生化学にin vivoイメージングを取り入れ、各臓器における組織成長よって生じる物理的な力、場の不均衡性および流動性、VEGF受容体の使い分けの観点から、血管多様性獲得の普遍原理を解明する。
本研究は、臓器によって異なる血管パターニングの多様性がいかにして獲得されるかを解剖学・細胞生物学・生化学、in vivoイメージングなど多様な技術を統合して解き明かすべく遂行された。特に歯における血管ネットワーク構築の分子メカニズム、および血管が歯の硬化に与える影響を明らかにする(Matsubara et al., J Exp Med 2022)とともに、進行がんの血管に特異的に使われている血管内皮細胞間接着システムを明らかにし、がんの転移を効率的に抑える分子標的を同定した(Ando et al., J Clin Invest 2022)。
歯の血管の解析で見出された細胞メカニズム、網羅的に同定された血管由来の象牙芽細胞成熟因子などの解析をさらに進めることによって、虫歯・歯周病により失われた歯の再生への応用が期待される。また腫瘍血管の研究成果については、血管ががん細胞を転移させるユニークな仕組みを解明したものであり、ヒトでこのFLRT2の働きを特異的に抑えられる薬剤が開発されれば、VEGF阻害剤では不十分であった、がん転移を効率的に抑える分子標的薬となることが期待される。さらには、免疫チェックポイント阻害剤をがんの奥まで深達させ、その効果を最大限にさせるための、「地ならし」的な併用療法への応用も期待される。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 8件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 5件、 招待講演 11件) 備考 (2件)
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