研究課題
基盤研究(B)
肝癌は多中心性発癌を特徴とする。ウイルス性慢性肝炎の治療が確立し、肝発癌抑止は最重要アンメット・ニーズである。われわれはゲノムワイド関連解析により肝癌感受性遺伝子MICAを同定した。Kill meシグナルであるMICA発現肝細胞をNK細胞が排除することが肝発癌抑止に重要である。しかし、肝癌細胞はMICA切断酵素を発現し自然免疫機構から逃避しており、その機構を標的とした発癌抑止法の開発を目指す。
MICAは肝癌細胞表面に発現され、NK細胞の標的となるが、肝癌細胞はMICAを切断しNK細胞攻撃から回避している。1)MICA切断酵素として、ADAM9/10/17を同定した。2)肝癌組織でMICA発現は上昇していたが、MICA切断によりNK細胞の肝癌組織への浸潤度は低かった。3)ADAM9を阻害する薬剤スクリーニングにより、2種類のロイコトリエン拮抗薬と非環式retinoidを同定した。4)ADAM9は膜型PD-L1も切断し、獲得免疫機構からも逃避していた。以上から、ADAM9阻害により肝癌に対する自然免疫、獲得免疫を賦活化し、肝発癌抑止、肝癌治療に応用しうると期待された。
ほとんどのC型肝炎症例でウイルス排除が可能となったが発癌は十分に抑止できていない。C型肝癌に対する薬物療法は複合免疫療法が第一選択となったがその効果はいまだ満足するレベルに達していない。したがって、新たな発癌抑止法、肝癌治療法の開発が急務である。肝癌細胞に表出している自然および獲得免疫の標的となる分子であるMICA、PD-L1のADAM9/10/17による切断が肝癌細胞の免疫逃避機構の一翼を担っており、それらの切断阻害は自然免疫賦活による新たな発癌抑止法となる可能性、また、肝癌細胞に対する自然免疫賦活+獲得免疫賦活による新たな肝癌治療法となる可能性があると期待される。
すべて 2021 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件)
BMC Cancer
巻: 22 号: 1 ページ: 428-428
10.1186/s12885-022-09512-5
Anticancer Res
巻: 41 号: 5 ページ: 2307-2320
10.21873/anticanres.15006
Cancer Immunol Immunother
巻: 70 号: 1 ページ: 203-213
10.1007/s00262-020-02660-2