研究課題
基盤研究(B)
現在の乳がんの治療戦略は、がん細胞のみの性質に基づいて決定されており、間質細胞に対する生物学的評価は利用されていない。しかし、間質の状態により予後や治療反応性が異なることより、間質反応を含めた治療戦略が必要である。我々が確立した三次元共培養系を用い、エストロゲン涸渇下やシクロホスファミド、CDK4/6阻害薬添加条件で、親細胞と内分泌耐性細胞を比較することにより、各間質細胞の治療反応性や耐性に関与する候補分子を同定する。さらに血液検体を用いた免疫応答、遺伝子変異と治療反応性について検討を行い、AIとバイオインフォーマティクスを用いて統合的に解析し、間質特性に基づいた治療戦略を提案する。
がん細胞と間質細胞が共存するための両面培養システムを確立し、ホルモン療法施行時と分子標的治療薬併用時の反応性について、乳癌細胞株と乳腺由来間質細胞を用いて検討した。細胞のRNAシークエンスによる遺伝子発現プロファイルの解析と培養上清代謝産物のメタボローム解析を行った。ホルモン療法の治療効果に関与すると考えられる候補分子、候補シグナルパスウェイの解析のほか、エベロリムスの治療効果や治療抵抗性に関与すると考えられる分子、パスウェイの検討を行った。術前ホルモン療法+CDK4/6阻害薬の術前療法の臨床試験を完了し、結果を学会にて報告した。
ホルモン受容体陽性乳がんの予後は他のサブタイプと比べると良好といわれているが、実際には術後5年以上たった段階で再発するような場合も多く(晩期再発)、さらなる治療の改善が必要となっている。ホルモン療法は乳がんの微小環境を変化させる治療であることから、乳がんのみでなく、微小環境も合わせて治療対象とすることにより、より効果的な治療が可能になると考えられる。我々は、生体内に近い環境で乳がん細胞と間質細胞を共培養することができる3次元培養システムを開発し、ホルモン療法や分子標的治療の効果に影響する分子やパスウェイの解析を行った。これらの結果は、より効果的な乳がん治療に結び付くと考えられる。
すべて 2022 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
BMC Medicine
巻: 20 号: 1 ページ: 136-145
10.1186/s12916-022-02332-1
Chin Clin Oncol
巻: 9 号: 3 ページ: 35-41
10.21037/cco-20-165
Breast Cancer Research and Treatment
巻: 180 号: 2 ページ: 331-341
10.1007/s10549-019-05512-5
巻: 177 号: 3 ページ: 549-559
10.1007/s10549-019-05318-5
JNCI: Journal of the National Cancer Institute
巻: 111 号: 12 ページ: 1298-1306
10.1093/jnci/djz090