研究課題
基盤研究(B)
歯周組織の炎症は歯槽骨吸収を引き起こし歯周病を進行させる。さらに、脂肪肝に伴う慢性炎症が歯周病増悪の危険因子となり得ることから、歯周病と脂肪肝をはじめとる生活習慣病との負の双方向性が注目されつつあるが、それら疾患に共通する標的分子は未同定のままである。本研究は、脂質合成経路とマクロファージ活性化経路の抑制を試みることで、歯周病・脂肪肝両疾患の新規治療戦略を構築し、効率的な歯周組織再生につなげることを目標とした。
本研究は細胞内脂質代謝調節タンパク質Lipinを介したマクロファージにおける炎症制御分子機構の解明を目的としている。初年度は、抗炎症タンパク質としての機能が近年報告されているLipin2の分子活性調節機序同定の一環として、Lipin2タンパク質分解メカニズムの一端を明らかとした。本研究の背景として、Lipin2をコードする遺伝子の異常がマジード症候群と呼ばれる骨融解を伴う骨髄炎の発症につながることが報告されていることから、令和2年度はLipin2の機能とマクロファージにおける炎症・破骨細胞形成シグナルとの相関に着目し解析を行った。Lipin2ノックアウト細胞株をリポ多糖(LPS)で刺激し、コントロール細胞との比較によりLipin2機能欠損がLPS依存的な炎症シグナルの細胞内伝達経路にどのような影響を及ぼすか解析した。さらにLipin2の欠損がRANKL依存的な破骨細胞形成を促進するか観察し、以下の点を明らかとした。(1) Lipin2はLPS刺激に応答する炎症反応関連遺伝子群の発現を負に調節する。(2) Lipin2はTLR4下流NFkappaBならびにMAPキナーゼ両経路のLPS依存的な活性化を抑制する。(3) Lipin2ノックアウトによりRANKL依存的な破骨細胞様細胞への分化が促進される。(4) Lipin2はNFATc1活性化を抑制する。以上よりLipin2の、抗炎症ならびに骨吸収抑制に関連した分子機能の一端を明らかにすることができた。これらの知見から、Lipin2の機能喪失に伴い発症する骨髄炎に対する治療法開発の可能性が示唆された。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
すべて 2021 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (1件)
International Journal of Molecular Sciences
巻: 22 号: 6 ページ: 2893-2893
10.3390/ijms22062893
The FASEB Journal
巻: 34 号: 11 ページ: 14930-14945
10.1096/fj.202001340r
Journal of Biological Chemistry
巻: 295 号: 45 ページ: 15328-15341
10.1074/jbc.ra120.014281
Nat Cell Biol.
巻: 22(9) 号: 9 ページ: 1064-1075
10.1038/s41556-020-0562-4
iScience
巻: 23 号: 7 ページ: 101329-101329
10.1016/j.isci.2020.101329
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 524 号: 2 ページ: 477-483
10.1016/j.bbrc.2020.01.119
Molecular Oncology
巻: 13 号: 2 ページ: 307-321
10.1002/1878-0261.12403