研究課題
基盤研究(B)
身体不活動の状況が長期間にわたり継続すると、骨組織に対するメカニカルストレスのため骨量は著しく減少し、不動性骨粗しょう症を発症する。この骨量減少では、これまで知られている骨細胞の影響に加えて、破骨細胞への直接的な作用があることを見出したことから、本研究では、①破骨細胞特異的なノックアウトマウスの作成と解析、②ノックアウトマウス由来の破骨細胞を用いたシアストレス負荷実験、③シアストレスによる活性化メカニズムの解析、を通じて仮説の真偽を検証し、身体活動による骨量低下抑制の分子メカニズムを明らかにする。
不動性骨粗しょう症では、骨組織におけるメカニカルセンサー細胞である骨細胞における破骨細胞分化因子RANKLの発現亢進に大きく依存すると考えられていた。しかし、不動性骨粗しょう症を発症させたモデルマウスにメカニカルストレス負荷を行うと骨組織のRANKL発現の変動に先立って破骨細胞数が減少することを見出し、破骨細胞に対するメカニカルストレスの直接的な影響を示唆する個体レベルでのデータを得た。そのメカニズムとして、身体活動に伴って発生する骨内の間質液の動き(間質流)に由来する破骨細胞やその前駆細胞への剪断応力(シアストレス)負荷がアポトーシスを誘導することを細胞レベル、分子レベルで明らかにした。
骨組織の恒常性維持には様々な組織・臓器による制御に加え、骨組織に対する力学的荷重刺激による制御が非常に重要である。骨組織では常に古い骨は破骨細胞によって吸収され、新しい骨が骨芽細胞によって形成されている。この吸収と形成のバランスが保たれることにより正常な骨組織が維持されるが、寝たきりや車椅子使用など障害者の身体不活動時のような骨組織に力学的荷重刺激がかからない環境ではバランスが吸収に傾き、骨量が低下して骨粗しょう症を発症する。本研究成果は力学的荷重による骨吸収のメカニズム解明に貢献し、将来的な破骨細胞を標的とする骨粗しょう症の新たな治療法の確立につながることが期待される。
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