研究課題/領域番号 |
19H04120
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60090:高性能計算関連
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研究機関 | 会津大学 |
研究代表者 |
高橋 成雄 会津大学, コンピュータ理工学部, 教授 (40292619)
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研究分担者 |
有川 正俊 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (30202758)
三末 和男 筑波大学, システム情報系, 教授 (50375424)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2020年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2019年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | 情報可視化 / 地図総描技法 / メンタルマップ / 制約付き最適化 / 奥行き手がかり |
研究開始時の研究の概要 |
地図は,様々な用途のおいて異なる縮尺のものが必要となるが,一般的にその縮尺や用途の違いに応じて,地図要素の配置や表現に転位(移動),簡単化(単純化),集約(併合),取捨選択(省略)なども様々な操作が施される.これらは,地図学において長きに培われきた,地図総描技法として知られている.本研究は,この地図総描技法を情報可視化の視覚表現に適用することで,データの詳細度やユーザの分析意図に応じた対話的な可視化環境を構築する.これは,近年の情報可視化が直面している,計算機環境の高性能化による大規模かつ複雑なデータの処理においても効果的な解決策を提供する.
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研究実績の概要 |
本研究は,5年間の研究計画において,どのような詳細度やユーザの分析意図の違いにも対応できる,情報可視化のための視覚要素配置問題を解くための計算アルゴリズムを,地図学において培われてきた地図総描技法を導入することで,定式化を図ることを目的としている.本研究計画は,A.からF.までの6つの小課題から構成されている.そのうち,本年度においては,B.とC.2つの課題について集中的に取り組んだ. まず,「B.視覚要素の大局的配置のためのメンタルマップの高度化」においては,視覚要素の大局的配置に関する「集約」と「簡単化」を,実現するための手法の定式化と実装を進めた. 「集約」に関しては,ゲシュタルト原理に示される近接と類同に基づく視覚要素の結合を集約操作ととらえ,画像のセグメンテーションに用いられるグラフカット手法を拡張して実現を図った.加えて,矛盾する複数の集約操作から所望の操作を選択するための,対話的編集システムを実装し,今後のユーザスタディ実施に備えた. 「簡単化」に関しては,視覚要素の境界形状の凹凸を,境界エッジの移動により軽減する定式化を採用し,プロトタイプシステムを実装した.また,簡単化操作適用後の境界形状のメンタルマップ保持の度合いを,並行してユーザスタディを介して調べてながら,今後の計画に備えている. 次に,「C.情報可視化の代表的な2次元情報表現における視覚要素最適配置の定式化」においては,地図総描技法の基本操作と位置づけている「転位」,「取捨選択」,「集約」,「簡単化」のそれぞれの最適化操作のトレードオフを,多目的最適化問題として定式化することで,対話的に選択できるシステムの構築を目指した.とくに,「転位」と「取捨選択」における最適化のバランスを,パレート解をトレースして選択できるシステムの実装を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,まず初期段階で,「転位」,「取捨選択」,「集約」,「簡単化」の4つの基礎的な地図総描技法個々の定式化を図る必要がある.そして,これら4つの操作は,元来衝突があり同時には達成できないため,与えられた視覚要素配置そのものに基づき,4つの総描技法のトレードオフを考慮に入れながら,全体として最適化を行う必要がある.そして,その全体のバランスを取るための道具として,大局的配置を制御するためのメンタルマップの高度化が必要となってくる. 進行状況として,「転位」と「取捨選択」は,線形計画法を用いた近似により,制約付き最適化問題としての定式化と実装が終了している.また,2つの操作のトレードオフを上述のような多目的最適化問題として定式化する作業も完了している.これに対して「集約」と「簡単化」は,視覚要素全体の構造に関する操作が基本となる.「集約」はグラフカットの拡張を用いた手法の定式化および実装が,「簡単化」も境界エッジの移動による凹凸解消の定式化を用いた仮実装が終了している.「集約」と「簡単化」は,「転位」と「取捨選択」と異なり視覚要素の大局的配置に依存するため,別途この2つの技法を統合する方向で検討を進めている. 現在,上記4つの地図総描技法の実現は,ほぼ実装まで終わっており,その部分的な統合についても定式化および実装が進んでいる.その点で,課題「C.情報可視化の代表的な2次元情報表現における視覚要素最適配置の定式化」については,かなりの部分が終了していると評価できる.加えて,今後対応予定の課題「D.詳細度と分析意図の違いによるメンタルマップの許容範囲の導出」で実施予定のユーザスタディに関しても,部分的に当初の研究計画より先んじて進めることができている. 以上により,総じて計画全体としては概ね順調に研究を遂行できていると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,課題「D.詳細度と分析意図の違いによるメンタルマップの許容範囲の導出」における,ユーザスタディの実施と,それにより得られるをメンタルマップの許容範囲を用いた,最適な視覚要素配置手法の実装作業を中心に取り組む.具体的な課題として,以下の3つを想定している. 1)「集約」操作の精度向上: 現在までの集約操作においては,複数の視覚要素をその凸包で置き換えることで,視覚表現全体の抽象化を図っている.この場合,抽象化対象の視覚要素の部分集合を特定できれば,集約操作後の視覚表現は一意に決まることになる.しかしながら,複数の視覚要素を単純にその凸包で置き換えると,結果生じる凸包間に余計な重なりが生じてしまう.そのため,実際の地図総描技法に倣って,凸包をより視覚要素の形状を正確に模倣する凹包で置き換える拡張を計画している. 2)「集約」と「簡単化」のより質の高い統合: 上記のように「集約」操作に凹包を導入すると,抽象化の後に得られる視覚要素の形状が,凹包生成アルゴリズムの選択に依存して変わることになる.ここでは,集約前の視覚要素の形状を最大限保持しつつ,集約後の視覚要素形状の凸凹が少なくなる手法を検討する.この過程において,事前に実装済みである,境界エッジの移動による「簡単化」操作を組み込むことを検討していく. 3) 「集約」と「簡単化」の最適性の再定式化: 実際のところ,地図総描技法における地図の抽象化の操作は,専門の地図製作者の技に頼るところが大きく,それを正確に最適化問題の目的関数として定式化することは難しい.特に,視覚要素の大局的な配置の抽象化に対応する「集約」および「簡単化」は,最適化問題の目的関数の模倣自体に困難が伴う.本研究では,そのような専門家の技による抽象化操作の例を,ユーザスタディを介して収集し,機械学習を用いてその最適性を再現する枠組みの導入を図る.
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