研究課題/領域番号 |
19H04123
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60100:計算科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
蜂須賀 恵也 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (00748650)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
16,900千円 (直接経費: 13,000千円、間接経費: 3,900千円)
2020年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
2019年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | レンダリング / 光伝搬シミュレーション / モンテカルロ法 / モンテカルロ積分 / 重点サンプリング |
研究開始時の研究の概要 |
光伝搬シミュレーションは、映像産業やデザインなどで基盤となる現代社会に欠かせない技術である。光伝搬シミュレーションは、一般にモンテカルロ法を用いた多次元の数値積分として定式化される。しかしながら、近年、モンテカルロ法が必ずしも最適ではない事を示唆する知見が得られてきた。例えば、光伝搬シミュレーションにおける被積分関数は様々な数学的特徴を持つが、モンテカルロ法はそれらの特徴を無視し、任意の被積分関数を仮定した計算を行なっている。本研究では、光伝搬シミュレーションにおけるモンテカルロ法の問題を根本的にかつ本質的に解決するために、モンテカルロ法以外の光伝搬シミュレーションの可能性を探る。
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研究実績の概要 |
本年度は、モンテカルロ積分を用いた光伝搬シミュレーションの問題の中で、特に誤差がノイズとして現れる問題に注目して研究を行った。そのようなノイズを除去する手法として、近年では、画像に対するフィルタ処理を機械学習によって得る方法が研究されているが、フィルタ後の計算結果の妥当性に保証はなく、計算結果の重要な特徴が失われる可能性があるという根本的な問題がある。 そこで、本研究では、フィルタ処理によって行われる計算を、モンテカルロ積分の一種として定式化し、モンテカルロ積分の数値計算的妥当性を保ちつつ、フィルタ処理と同様なノイズ除去が可能になるような計算手法を開発した。具体的には、まず、フィルタ処理を積分形式で記述することで、もともとの積分空間とフィルタ処理による積分空間の拡張を考える。そして、フィルタ処理は離散的には重み付き和として記述できる事に注目し、それをモンテカルロ積分の一種である、多重重点サンプリングとして表す。これにより、妥当性を保つフィルタ処理の条件が明らかにした。 しかしながら、既存の多重重点サンプリングは離散的な重み付き和を考慮していたため、離散化する前のフィルタ処理には適用できないという問題もあった。その問題を解決するために、多重重点サンプリングを連続空間(重み付き和の拡張としての定積分)に一般化した、「連続多重重点サンプリング」という枠組みを開発した。これにより、フィルタ処理を、連続多重重点サンプリングによるモンテカルロ積分として再定義する事が可能となり、計算の妥当性を保ったフィルタ処理が可能になることを発見した。この研究成果はACM SIGGRAPH 2020に投稿し、論文として採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の通り、提案している研究課題の一つである、計算誤差の分布を考慮した光伝搬シミュレーションにおいて、フィルタ処理とモンテカルロ積分の数学的な統合の一歩となる成果を得られることができた。研究成果はコンピュータグラフィックスにおけるトップの学会であるACM SIGGRAPH 2020に採択されており、順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度で得られた「連続多重重点サンプリング」は、フィルタ処理とモンテカルロ積分の統合以外にも、数値積分において、連続的に重点サンプリングの手法が定義できるありとあらゆる問題(例えば、異なる分散を持つガウス関数の族)に有効である可能性がある。したがって、ほかの応用についても検討を行いたいと考えている。また、この枠組みを利用し、研究課題の一つである、積分方程式による光伝搬シミュレーションの新たな解法について、数学的考察および数値実験を行う予定である。
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