研究課題/領域番号 |
19H04185
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61040:ソフトコンピューティング関連
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
工藤 卓 関西学院大学, 工学部, 教授 (10344110)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2020年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2019年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 深層学習 / 3Dクラスタリング / 培養神経回路網 / 神経誘発応答パターン / 自発性神経活動パターン / VGG16 / 転移学習 / 瞬時空間パターン |
研究開始時の研究の概要 |
外界の情報が神経活動の時空間パターンに表象される様式を詳細に明らかにするため細胞外電位多点計測皿上に培養した神経回路網の神経活動を解析する.神経活動の時空間パターンを3D多層クラスタリングにより抽出し,得られた時空間パターンを深層学習により識別することを試みる.独立した2電極からの刺激により誘発された2誘発応答パターンと自発性電気活動の3種の活動パターンを識別できるように学習を行い,学習後のディープニューラルネットワークに保持された識別に有用な特徴量を抽出する.得られた特徴を考察し,結果から<自発性活動は神経活動の内部状態を形成し,誘発性応答パターンのソースになっている>とする仮説を検証する.
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研究実績の概要 |
今年度は,神経活動パターンを画像化する手法において,其の前処理として新たな方法を2つ試行した.1つは,これまでと同様に情報処理の単位と考えられている電極ごとのバーストをクラスタリングの単位とする手法である.今年度は,一時クラスタの要素ごとにまとめて画像を生成するのではなく,各パターンの出現時間順を維持した形でマップを結合して224x224 画像を形成した.もう一つの手法は,瞬時空間パターンマップを用いた画像生成である.瞬時空間パターンマップとは,刺激開始後に計測された電位信号において,1 刺激(スイープ)ごとに 100 ms の活動について 1 ms 幅の時間窓で活動電位スパイクを検出し,64電極のスパイクカウントデータから作成したマップであり,シナプス間の神経信号伝達が起こらない 1 ms の短い時間幅で区切られた同一の時間窓内で発火した再現性の高い電気活動の空間パターンを示している.これは,刺激が誘発した一つの信号が分岐したり並列したりしながら伝搬した伝搬ストリームの神経活動痕跡を時間順に並べた画像に相当する. 第一の手法,第二の手法ともに90% 以上の高精度で自発性活動パターンと誘発応答パターンの識別に成功した.第二の手法では,空間優先神経活動パターンイメージの識別精度は神経回路網ごとにばらつきがあったものの,概ね 90%を超えたところで収束したが,エポックごとの識別精度が不安定な傾向があった. 時間優先神経活動パターンイメージの識別精度は,ほぼ100%に近く,空間優先神経活動パターンイメージと比較して精度が収束するまでのエポック数が少ない傾向があった.空間優先も時間優先も共に高い識別精度であったことから,信号の時空間的伝搬であるストリームがニューラルネットワークの識別に大きく影響する可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでと同様に情報処理の単位と考えられている電極ごとのバーストをクラスタリングの単位とする手法である.バースト活動を基準としてタイムスタンプを変換し,時空間の時間情報方向の密度を下げて活動パターンレパートリーを抽出するところまでは昨年度までと同一であるが,一時クラスタの要素ごとにまとめて画像を生成するのではなく,各パターンの出現時間順を維持した形でマップを結合する手法も検討し,さらに識別精度を上げた.また,刺激が誘発した一つの信号が分岐したり並列したりしながら伝搬した伝搬ストリームの神経活動痕跡を時間順に並べた画像として,時間的に連続した瞬時空間パターンマップを複数結合して合成した画像を生成し,この場合は,時間優先神経活動パターンイメージにおいてほぼ100%に近い識別精度を示し,さらに精度が収束するまでの過程が,空間優先神経活動パターンイメージより収束が早かったことから,信号の時空間的伝搬であるストリームが神経回路網の情報表現に有効であることが示唆されたことは,計画当初よりも進んだ内容であると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,瞬時空間パターンを用いた識別手法を更に発展させる.瞬時空間パターンの接続による神経伝搬ストリームと3Dクラスタリング手法から得られた活動パターンレパートリー(セルアセンブリ)とを比較して,両者の関係性を解析し,外界からの入力を神経回路網が内部でどのように表象しているか,其の様式を明らかにする.更に,引き続き自発性活動と誘発応答活動はそれぞれ独立した活動ではなく,自発性活動は神経活動の内部状態を形成し,誘発応答活動パターンのソースになっているという「神経回路網入出力のルースカップリング」仮説を,本手法を用いて立証する.
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