研究課題/領域番号 |
19H04198
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61060:感性情報学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平松 千尋 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (30723275)
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研究分担者 |
丸山 修 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (20282519)
元村 祐貴 九州大学, 芸術工学研究院, 助教 (50645273)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2019年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
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キーワード | 色覚 / 多様性 / 主観的体験 / 脳波 / 機械学習 / 感覚意識体験 / 神経表現 / デコーディング / 主観的感覚 / 遺伝子 / カテゴリ化 / ハードプロブレム / 脳情報 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトの色覚には多様性があり、同じ光波長に対する知覚は受容器の特性により異なる。しかし、遺伝的に色覚が異なる人々の間でも、ある色刺激を同じ色としてカテゴライズする場合があることから、色に関する神経表現の多様性と共通性が予測される。本研究では、異なる色覚を持つ人々が同じ色を見ているときの神経活動パターンから、見ていた色のデコーディングに重要な神経表現の特徴量を抽出する。特徴量の共通性と相違から、他者が直接体験できず、神経科学のハードプロブレムとされている主観的な感覚意識体験が、神経表現のどのような共通性と多様性に立脚しているかを究明する。
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研究実績の概要 |
異なる色覚を持つヒト参加者を対象とし、色覚によって目立ちやすさが異なると予測される同じ光波長成分から構成された色刺激を用いて、注意に関連する神経活動を脳波で計測し、その共通性と多様性を詳細に調べてきた。昨年度報告の通り、医学的には2色覚や異常3色覚と呼ばれる少数派の色覚を持つ人々において、顕著性が低いと予測される色刺激に対して、早い潜時での神経応答の増幅が見られていた。色覚は上述のように類型化されがちであるが、色に対する感度は連続的であることが示されている。そこで、心理物理学的方法で計測した赤緑方向の色弁別閾値と、早い潜時の神経応答強度の関連を分析したところ、高い相関が示され、神経応答は弁別が難しい色に対する応答であることが裏付けられた。このことは、波長弁別感度を埋め合わせるような神経活動があることを示唆しており、神経情報処理の柔軟性を示す一例になると考えられる。 色のカテゴリ化の背後にある神経活動を捉える研究に進む予備段階において、少数派の色覚を有する人において同じ物理刺激に対し、色カテゴリが変化する現象を見出した。この現象は、一見あてずっぽうに色カテゴリを推測していると受け取られることもあるが、一定の法則性が見られたため、主観的な知覚に揺らぎがあることを反映していると現時点ではとらえている。 色覚の連続的多様性をもたらすゲノムレベルの遺伝子解析については、第三世代シークエンサーによる塩基配列データは、知覚のわずかな違いに対応する遺伝的な違いを見出す解析のためのデータとしては精度が低く、データ取得コストも高いことが判明してきており、今後対策を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、これまでの研究成果を学術論文としてまとめることに注力したことにより、次の段階への準備が遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの成果をまとめた論文を現在投稿中である。その出版を今年度の最初の目標とする。同時に色覚が異なる人々の間で色の概念が共有化される現象の背後にある神経メカニズムの研究に取り組む予定である。具体的な研究手法としては色のカテゴリ知覚に関わる神経活動パターンのデコーディングであるが、2023年初頭に海外の研究者によって同様の研究による成果が既に発表されている。色覚の違いに着目する本研究とは最終的目的が異なるため、手法の妥当性を裏付ける先行研究となるが、本研究ではデコーディングの可能性以上のことを目指したいと考えている。そこで、これまでの研究において少数派の色覚を有する参加者の主観報告において、同じ色刺激に対して知覚される色カテゴリの報告には時間的な揺らぎが観察されていたことに着目する。この主観的な知覚交代の背後にある神経メカニズムについても探索的な研究を行い、新たな研究目標につなげたいと考えている。 色覚の連続的多様性をもたらすゲノムレベルの遺伝子解析については、個人研究室単位で所有できる第三世代シークエンサーの精度の問題から解析が遅れていた。そこで、先端ゲノム支援のもと第ニ世代と第三世代シークエンサーにより得られたデータを、国立遺伝学研究所のスーパーコンピューターを使用して比較し、第三世代シークエンサーの精度について、ヒトゲノムの多様性解析に耐えうるかについて詳細に解析する予定である。
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