研究課題
基盤研究(B)
都市樹木は、樹冠による被陰や蒸散による冷却効果、大気汚染物質の捕捉・二酸化炭素吸収などにより都市環境を改善する。樹木活性の維持には光合成と蒸散を調節する気孔開閉特性が鍵となるが、樹種によって大きな差がある。この応答性の変異が生じる生理学的機構を明らかにし、都市樹木の樹冠形成と光合成生産を最適化するために、気孔応答の調節因子の一つである「アクアポリン」について、分子レベルから実際の植栽木レベルまでのスケールの実験的解析を実施する。モデル植物による解析と実際の街路環境との関係性を明らかにするための野外実験を実施して、気孔応答調節の生理学的・遺伝学的メカニズムを解明する。
炭素安定同位体比および光合成測定により、ポプラおよび街路樹の環境応答機構を解析した。(1)ポプラの冠水ストレス応答 ポプラに冠水ストレスを与えたところ、葉の光合成機能にはほとんど低下が見られなかった。炭素安定同位体比も冠水ストレスによってほとんど変化しなかったことから、冠水はポプラの光合成機能にあまり大きな影響は与えないことが明らかになった。(2)街路樹の弱光に対する光合成応答 イチョウを弱光環境で栽培し、弱光に対する耐性を評価した。弱光で光合成速度は低下したが、葉の炭素安定同位体比にほぼ変化がみられなかったことから、長期的な水利用効率は、弱光によってほとんど影響を受けないことが明らかになった。(3)街路樹の大気汚染に対する光合成機能応答 京都府造園組合との協働により、2023年11月に、大気汚染レベルが異なる京都市内の調査地において4種(高木:イチョウ・ソメイヨシノ、低木:ヒラドツツジ・シャリンバイ)の街路樹サンプリングを行った。葉の「同位体比」の測定を行った結果、シャリンバイ以外の3種では、交通量が多く大気汚染レベルが高い調査地の方が光合成活性が低くなっていることが明らかになった。一方、2020-2023年度に得られた結果を、2005年-2008年までに得られた結果と比較すると、2020年-2023年は、低木の街路樹であるイチョウ・ソメイヨシノ・ヒラドツツジについては、大気汚染による光合成活性の低下が抑制されていたことが示された。さらにこの期間の光合成活性低下の抑制には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による経済停滞の影響はほとんどなく、むしろ排気ガス規制などによる長期的な大気汚染改善が大きく貢献していることが明らかになった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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