研究課題
基盤研究(B)
フェムト秒の時間幅を持つX線自由電子レーザーは、フェムト秒化学に新たな進化をもたらすツールである。特に時間分解X線吸収分光において元素選択的に局所構造の超高速変化の追跡が可能となり、化学反応中の分子構造について全く新しい知見をもたらすことが期待されている。本研究では、溶液中で光励起された金属錯体が緩和する際に起こる核波束振動の局所的な構造変化を原子分解能で観測する。申請者が確立したタイミング揺らぎの補正技術を用いることにより、世界最高の時間分解能の50フェムト秒で分子構造のリアルタイム動画を実現する。
本研究では、溶液中で光励起された金属錯体分子が緩和する際に生じるコヒーレントな振動の局所的な構造変化を時間分解X線吸収分光によって原子分解能で観測することを目的とした。この目的に沿って時間分解能を半値幅で70フェムト秒まで高め、光励起直後から銅(I)錯体が振動していく様子を追跡することに成功した。また、入射X線の波長によって観測可能な振動が変化すること、すなわち各々の振動に対する感度が内殻電子の双極子遷移モーメントの大きさに関連することが分かった。この発見は予想していなかった本研究の独自性であり、超高速X線科学の発展に向けた基礎的な知識として重要である。
本研究は、溶液中の光反応において分子構造の変化をフェムト秒の時間分解能で観測するX線分光を確立した。また、どのような動きに対してX線分光が感度を発揮するのか?という基礎的な問いに対して明瞭な指針が得られた。このような成果は世界的にも類のない本研究独自のものであり、今後の超高速X線科学の発展に資するものである。また、本研究で確立した時間分解X線分光は様々な系に応用可能であり、光化学分野で期待が高まっている人工光合成の実現や、高効率太陽エネルギー変換マテリアルの構築において設計上の指針を与える分析手法として重要である。
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すべて 国際共同研究 (18件) 雑誌論文 (18件) (うち国際共著 14件、 査読あり 18件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 備考 (2件)
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