研究課題/領域番号 |
19H05458
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研究種目 |
特別推進研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
長崎 幸夫 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90198309)
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研究分担者 |
佐々木 茂貴 長崎国際大学, 薬学部, 教授 (10170672)
吉冨 徹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (20585799)
丸山 達生 神戸大学, 工学研究科, 教授 (30346811)
案浦 健 国立感染症研究所, 寄生動物部, 室長 (90407239)
富田 勉 株式会社タイムラプスビジョン(研究部), 研究部, 代表取締役 (30772488)
池田 豊 筑波大学, 数理物質系, 助教 (70425734)
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研究期間 (年度) |
2019-04-23 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
626,210千円 (直接経費: 481,700千円、間接経費: 144,510千円)
2023年度: 114,140千円 (直接経費: 87,800千円、間接経費: 26,340千円)
2022年度: 114,010千円 (直接経費: 87,700千円、間接経費: 26,310千円)
2021年度: 116,220千円 (直接経費: 89,400千円、間接経費: 26,820千円)
2020年度: 126,880千円 (直接経費: 97,600千円、間接経費: 29,280千円)
2019年度: 154,960千円 (直接経費: 119,200千円、間接経費: 35,760千円)
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キーワード | 分子組織化薬 / 感染症 / 短鎖脂肪酸 / オリゴ核酸 / ペプチド脂質 / シトリン欠損症 / アミノ酸 / 自己組織化薬 / 抗酸化 / 脂質ペプチド / 抗酸化剤 / 核酸 / ペプチドゲル / パーキンソン / 遺伝子 / がん |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では有機合成による低分子医薬品の開発や、鍵と鍵穴を作用機序とする酵素や受容体をターゲットとするバイオ医薬品などに限界が見えつつある中、「分子組織化」に基づく新しい薬物の開発を目標に、分担者とともに基礎研究を推進し、概念の確立を目指す。本研究は「分子の組織体」を用いて、これまで困難とされてきた薬理活性を発現させるところにあり、この「分子の組織体による薬理活性」をこれまでにない作用機序に基づく新たな創薬概念として提唱する。本研究では、wet系実験研究ならではの発見を大切にし、「多数分子が組織的・協同的に働く」という概念を創薬分野に導入・確立することが本研究の最大の特徴である。
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研究実績の概要 |
従来のビタミンや様々な抗酸化剤は低分子ゆえに正常細胞内のレドックス反応を破壊する重大な欠点があった。我々は自己組織能を持つ高分子に抗酸化剤を共有結合すると、正常細胞への取り込みが抑制されるために副作用を低減させ、炎症部位に集積して活性酸素種(ROS)を効果的に消去することを見出した。この成果は、低分子単独の薬理活性物質を自己組織化させることによって、低分子単独では得られない生体機能や治療効果を実現できる可能性を示すものである。これまでの有機合成による低分子医薬品の開発や、鍵と鍵穴を作用機序とする酵素や受容体をターゲットとするバイオ医薬品などに限界が見えるつつある中、本研究では「分子の組織体」を用いて、これまで困難とされてきた薬理活性を発現させるところにあり、この「分子の組織体による薬理活性」をこれまでにない作用機序に基づく新たな創薬概念として提唱する。目的を達成するために本研究では、wet系実験研究ならではの発見を大切にし、「多数分子が組織的・協同的に働く 」という概念を創薬分野に導入・確立することが本研究の最大の特徴である。これまでに抗酸化型、アミノ酸型、短鎖脂肪酸型自己組織化薬を設計し、がんやうつ病、肝障害、膵臓障害など様々な動物モデルを作製し、その効果の実証をしてきた。また、隣接基効果による新薬合成では隣接基効果により初めて選択的に機能する分子を設計し、細胞実験で実証を進めている。また、生体内環境でゲル化する分子設計では腫瘍環境から細胞内への展開を進め、動物実験にも成功しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は前年度に引き続き、自己組織化抗酸化剤、アミノ酸、短鎖脂肪酸類の組織化薬の創出を行い、また隣接基効果、細胞内ゲル化を利用した創薬を以下のように進めた。前年度に見いだした自己組織化抗酸化剤(RNP)経口投与により消化管内の活性酸素種(ROS)を選択的に消去することでうつ病を改善する効果において、そのメカニズムを解析した。新規自己組織化型抗酸化剤SMAPoTNを開発し、RNPに比べてサイズが小さく、経口投与で血中に取り込まれるものの、RNPと同様に低毒性を確認した。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)トランスジェニックマウスに対し、SMAPoTNは炎症及び繊維化を抑制し、これが抗酸化だけで無く、抗小胞体ストレスにも強く相関することを認めた。短鎖脂肪酸型自己組織化薬において、前年度の病態モデルに対する効果の再検証とメカニズムの解析を行った。また、バルプロ酸型自己組織化薬でてんかんモデルマウスに対しての効果を実証した。さらに酪酸及びフェニル酪酸型自己組織化薬を作製し、小胞体ストレスモデルマウスに対して検討を開始した。アミノ酸型自己組織化薬ではポリシステイン型薬を設計し、固形がん、急性肝障害、NASH、敗血症モデルマウスに対する効果を確認した。また、γ―アミノ酪酸がた自己組織化薬を設計し、鬱病モデルマウスに対する効果を確認した。隣接基効果による選択反応では、未熟停止コドン(PTC)であるUAA, UAG およびUGAの3番目および2番目のアデノシンアミノ基を様々な官能基で化学修飾したmRNAを用いて翻訳反応を行い、リードスルー生成物を観測するのに成功した。細胞内ゲル化型分子組織化薬では、がん細胞内で過剰発現している酵素・キナーゼに応答したペプチド脂質の開発に成功し、特定のガン細胞選択的殺傷を実現した。担癌マウスにおいても良好な結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの状況にもよるが、オンサイトでの検討会を進め、お互いの交流をはかり、相互理解を進め、新た何展開を推進する。抗酸化型自己組織化薬・アミノ酸型自己組織化薬・短鎖脂肪酸型自己組織化薬については新たな分子設計を進めるとともに、新たなモデル動物への展開を行う。また投与量依存性や毒性、安全性に関しても検討を進めていく。隣接基効果による選択反応では、PTCのアデノシンを様々な分子構造で化学修飾したmRNAを用いて、翻訳により生成するペプチド配列を精密分析し、リードスルー活性と修飾構造の相関を明らかにする。細胞内ゲル化型分子組織化薬ではペプチド脂質の取り込み挙動を定量化し、また能動的な取り込み促進機構を導入する。これによりペプチドを全身投与する際に腫瘍組織に集積しやすくする。一方、D体ペプチドとL体ペプチドの相互作用に基づく新たな分子組織化薬開発を行う。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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