研究課題/領域番号 |
19H05459
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研究種目 |
特別推進研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 栄一 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別教授 (00134809)
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研究分担者 |
原野 幸治 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, 主幹研究員 (70451515)
柳澤 春明 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (70466803)
シャン ルイ 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任准教授 (50793212)
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研究期間 (年度) |
2019-04-23 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
617,760千円 (直接経費: 475,200千円、間接経費: 142,560千円)
2023年度: 90,090千円 (直接経費: 69,300千円、間接経費: 20,790千円)
2022年度: 92,560千円 (直接経費: 71,200千円、間接経費: 21,360千円)
2021年度: 102,830千円 (直接経費: 79,100千円、間接経費: 23,730千円)
2020年度: 271,050千円 (直接経費: 208,500千円、間接経費: 62,550千円)
2019年度: 61,230千円 (直接経費: 47,100千円、間接経費: 14,130千円)
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キーワード | 構造解析 / 電子顕微鏡 / 微量分析 / 有機化学 / 分子電子顕微鏡学 / 結晶形成 / 化学反応機構 |
研究開始時の研究の概要 |
「3次元分子シミュレーションのような3次元動画を実際の分子で撮影できないか?」「有機分子に馴染みの薄い電子顕微鏡(電顕)の世界」を「電顕に馴染みの薄い有機化学の世界」に導入し,「分子電顕技術(molecular electron microscopy)」という新しい分子科学の手法を確立することでこの問いに答える.有機分子やその集合体の動きを3次元の動画により単一分子レベルでの絶対配置の決定,溶液中の極微量成分の一分子一分子の単離と構造決定,一つ一つの化学反応事象の「その場」観察というこれまで不可能と考えられてきた可能性を拓き,触媒,有機エレクトロニクス,生物科学に関わる基礎科学の革新を目指す.
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研究実績の概要 |
2021年度は,2020年度に導入した高速カメラを活用して,3次元情報の取得,電子線と有機分子の相互作用の本質および機械的刺激と化学現象の関連の解明,電顕試料の担持法の開発を中心に研究進めることで「動的分子電子顕微鏡学」の確立に向けた取り組みを進めた. 1) 3次元情報取得に向けたハードおよびソフトウエア整備:「電圧可変,温度可変,収差補正,高速カメラ,ノイズ・振動除去ソフト」を備えたSMART-EM研究に特化した世界唯一の電顕を最大限に活用して分子三次元情報の時間展開,すなわち四次元情報の取得に挑んだ.既設のOneViewカメラでの予備的検討では,サンプル分子の配座変化がかなり早いために像のブレが生じて望みの結果が得られていない.そこでベンチマークとしてカーボンナノチューブ(CNT)の立体構造決定を取り上げ,K3-ISカメラのための自動焦点合わせソフトの開発から検討を開始し,所期の成果を得た. 2)機械的刺激と化学現象の関連の解明:化学現象が機械的振動によって影響を受けるという現象は,これまでの化学の標準的な考え方の範疇を超えた発見である.この問題を精査するために、カメラの高速性能を活かして,化学反応と振動の関係を原子レベルで調べ,食塩結晶の成長が入れ物であるCNTの振動と同期していることを発見した.3)電子線と有機分子の相互作用の本質の解明:電顕観察下での電子線と有機分子の相互作用の本質を解明するために,有機結晶の電子回折のシグナル強度の減衰のキネティクスを測定して,減衰が一次速度式に乗ることを発見した.4)試料担持の新手法開発:電顕観察を実施する上での鍵の1つが試料担持の仕組みである.フラーレンの形成する二重膜構造の調製法を開発し、それを透過及び走査電顕観察に役立つサンプル支持膜としての開発を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
開始当初は,単に分子の動きを見る,プロジェクトとして開始した本研究であるが,2021年度の研究において,当初計画になかった電子回折の分野に一歩踏み込むことができた.ここでは,有機結晶の電子回折のシグナル強度の減衰のキネティクスを測定して,減衰が一次速度式に乗ることを発見し,電顕観察下での電子線と有機分子の相互作用の本質を解明しする結果が得られてきた.
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今後の研究の推進方策 |
化学熱力学と統計力学という19世紀以来独立の研究分野として発展してきた化学と物理の二つの分野を結びつける新しい研究分野が展開できると期待される結果が得られてきたので,その方向に向かって鋭意努力する.
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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