研究課題/領域番号 |
19H05461
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研究種目 |
特別推進研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
藤田 誠 分子科学研究所, 特別研究部門, 卓越教授 (90209065)
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研究分担者 |
藤田 大士 京都大学, 高等研究院, 准教授 (20713564)
佐藤 宗太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任教授 (40401129)
矢木 真穂 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(機構直轄研究施設), 生命創成探究センター, 准教授(兼任) (40608999)
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研究期間 (年度) |
2019-04-23 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
624,000千円 (直接経費: 480,000千円、間接経費: 144,000千円)
2023年度: 123,500千円 (直接経費: 95,000千円、間接経費: 28,500千円)
2022年度: 123,500千円 (直接経費: 95,000千円、間接経費: 28,500千円)
2021年度: 123,500千円 (直接経費: 95,000千円、間接経費: 28,500千円)
2020年度: 123,500千円 (直接経費: 95,000千円、間接経費: 28,500千円)
2019年度: 130,000千円 (直接経費: 100,000千円、間接経費: 30,000千円)
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キーワード | タンパク質 / 自己組織化 / 中空錯体 / 構造解析 / 空間捕捉 / 包接 / NMR / X線回折 / タンパク包接 / NMR構造解析 / X線構造解析 / タンパク質包接 / 自己集合 / ケージ化合物 |
研究開始時の研究の概要 |
分子を限られた空間に捕捉すると、溶液やバルク状態では見られない新しい性質や反応性が発現する。最近我々は、分子の空間捕捉により分子の観測手段が変わることに着目し、「結晶化の工程を必要としないX線構造解析手法(結晶スポンジ法)」を創出した。本研究では、これらの知見をタンパク質分子に応用する。すなわち、人工的なケージにタンパクを空間捕捉し、(1)タンパクの性質を制御する。(2)タンパクの反応性を制御する。さらには、(3)タンパクの新しい構造解析手法を創出する。ここに生まれる成果は、合成生物学や構造生物学にまで波及する独創性の高いライフサイエンス技術につながることが期待される。
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研究実績の概要 |
分子を限られた空間に捕捉すると、溶液や固体状態では見られない新しい性質や反応性が発現し、さらに新たな観測手段でその構造を解析することができる。本研究では、この知見をタンパク質分子に応用する。すなわち、人工的なケージにタンパク質を空間捕捉し、(1)タンパク質の性質を制御する。(2)タンパク質の反応性を制御する。さらには、(3)タンパク質の新しい構造解析手法を創出することを目的とする。昨年度までにタンパク質包接の新規技術を開発し、それを用いたタンパク質の安定化、リフォールディングを観測した。今年度は、この錯体ケージへの包接・閉じ込めを活用して、タンパク質の変性、リフォールディングの過程の構造解析を行った。 タンパク質が有機溶媒などの変性剤で天然の構造を失うと多くの場合で凝集してしまうため、その変性構造を解析することはできない。この変性構造を錯体ケージに閉じ込めることで、その構造を溶液中で観測するとともに、その構造が復元するリフォールディングの過程をNMRで詳細に解析した。その結果、変性過程の過渡構造の詳細を明らかにするとともに、リフォールディングにおけるヒステリシス挙動を見出すことができた。加えて、このタンパク質の閉じ込めを活用してアミロイドβの凝集初期構造の解析を行った。アミロイドβ断片を2分子のみ選択的に錯体ケージに閉じ込めることで、従来方では観測できない二量体構造を観測することに成功した。 さらに、タンパク質とリガンドの間の相互作用の解析への応用展開に向けて錯体ケージへのタンパク質と小分子の共包接に取り組んだ。錯体内部の直径5ナノメートル程度の狭い空間にタンパク質とリガンド分子を閉じ込めることで、その間にはたらく弱い相互作用を誘起し、観測できることを実証した。今後は、この弱い相互作用を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までに、タンパク質の性質・反応性制御、タンパク質構造解析手法の創出における人工ケージへの空間捕捉の有用性を概念検証することができた。タンパク質の未踏構造の解析に活用できる手法へと発展させるための足掛かりができ、次年度で目標とするタンパク質構造解析を達成する見込みがおおむね立てることができた。今年度までコロナ禍の煽りを受けて留学生・ポスドクの合流の遅れや共同研究の滞りなど、多くの障壁があったことを踏まえると、期待通り、あるいはそれ以上の研究の進展が得られたと言える。 具体的には、タンパク質のケージ内への包接により、当初期待していた 「活性の維持」だけでなく想定していなかった「閉じ込め効果」が観測された。例えば、錯体に包接されたタンパク質は、有機溶媒中で一度変性し失活するにもかかわらず、再び水系溶媒に戻すことで安定フォールディング構造と酵素活性を取り戻す「シャペロニン効果」が見出された。さらに、この閉じ込め効果を活用することで従来手法では観測することのできないタンパク質の変性・リフォールディング構造をNMRを用いて詳細に解析することができた。新規タンパク質包接手法の開発、タンパク質の安定性制御(Chem 2021)に続けて、タンパク質の変性、リフォールディング構造の解析(Chem Sci 2023)を国際論文に発表するに至った。これらの知見をもとに、タンパク質構造解析に向けた新たな展開を進めており、人工ケージを用いた構造解析手法の創出が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに当初掲げた、巨大中空錯体への包接によってタンパク質の(1)性質・(2)反応性を制御することを達成した。今後は引き続き、(3)タンパク質の構造解析手法の創出を目指す。具体的には、以下の項目を主として包接による空間捕捉効果を活用したタンパク質構造の高効率解析手法を開発する。 1. 非生体環境でのNMR測定: これまでに見出した包接による安定化効果を活用して、非生体環境でNMR構造解析を行いタンパク質の新規構造情報を取得する。特に 0度以下の極低温測定を行い、通常条件では速くて捉えられないタンパク質のダイナミクスを詳細に解析することを目指す。 2. 画一条件測定によるX線構造解析の高効率化: X線結晶構造解析において、包接による空間捕捉効果によって画一的な条件でのサンプル調製を可能とし、タンパ ク質構造解析の高効率化を目指す。錯体ケージに覆うことで、結晶内におけるタンパク質分子同士の接触(結晶パッキング)が錯体ケージによって規定されることが期待される。 3. 不安定な凝集性タンパク質の構造解析: 錯体ケージへの包接により、通常は観察不可能な過渡的で不安定なタンパクの構造情報を取得する。具体的にはアルツ ハイマー病の原因とされるアミロイドβの凝集過程の構造解析を行う。特に、毒性が高いとされる過渡的なオリゴマー構造を調べる。 4. 弱いタンパク質-リガンド相互作用の解析: タンパク質とそれに結合する分子(リガンド)の相互作用のうち、通常では観測困難な弱い相互作用に関する構造情報を取得する。リガンドをタンパクと共に錯体ケージへ包接して空間的に閉じ込めることで、弱い相互作用を強制的に増強させ、従来は観測できなかった複合体の構造を解明する。特に病理・免疫において重要なタンパク質ー糖鎖の相互作用に着目して解析を行う。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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