研究課題/領域番号 |
19H05606
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分B
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
植竹 智 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (80514778)
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研究分担者 |
山崎 高幸 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (40632360)
下村 浩一郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60242103)
吉田 光宏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (60391710)
吉村 太彦 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 客員研究員 (70108447)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
200,590千円 (直接経費: 154,300千円、間接経費: 46,290千円)
2023年度: 28,210千円 (直接経費: 21,700千円、間接経費: 6,510千円)
2022年度: 34,450千円 (直接経費: 26,500千円、間接経費: 7,950千円)
2021年度: 52,130千円 (直接経費: 40,100千円、間接経費: 12,030千円)
2020年度: 36,530千円 (直接経費: 28,100千円、間接経費: 8,430千円)
2019年度: 49,270千円 (直接経費: 37,900千円、間接経費: 11,370千円)
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キーワード | ミューオニウム / 精密レーザー分光 / 基礎物理定数 / 電弱統一理論 / 新物理探索 / 純レプトン原子 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,レプトンのみからなる水素様純レプトン原子:ミューオニウム (以下Mu)の精密分光により,電弱統一理論の精密検証および新物理探索を行うことを目標とする.具体的には,(1) Muの1S-2S間遷移周波数の精密二光子レーザー分光;(2) 基底状態超微細分裂の精密マイクロ波分光;(3) 荷電束縛系のエネルギー準位に電弱効果が及ぼす影響を摂動2次の項まで取り入れた高精度理論計算;の3つを行う.実験精度を先行研究より大幅に向上させ,基礎物理定数であるミュー粒子質量の決定精度を大きく向上させると共に,理論と実験の比較を通じて電弱統一理論の精密検証と新物理探索を目指す.
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研究実績の概要 |
令和3年度までの研究で,ラザフォードアップルトン研究所(RAL)で行われた先行研究より50倍以上の信号レートで1S(F=1)-2S(F'=1)遷移 (Fは全角運動量) の共鳴スペクトルを得ることに成功していた.この高い信号レートを活かし,令和4年度はミューオニウムの1S(F=0)→2S(F'=0) 遷移の観測および2S状態のシュタルクシフトの観測を進め,世界で初めて観測に成功した.これらは先行研究では信号レートが低すぎて観測が不可能だったものである.また,励起レーザーシステムの改良も進めた.その結果,長期間安定して波長244nmの深紫外光を出力可能なシステムを構築した.さらに励起レーザーの周波数長期安定化および絶対周波数測定のために進めていた光ファイバーコム開発が完了し,J-PARCへ移設・導入した.これにより,1S-2S遷移周波数の測定精度は令和3年度までの10の-9乗から10の-11乗に向上し,研究遂行に十分な精度を得られるようになった. 実験でさらに高い信号レートを得るため,ミューオニウム生成ターゲットの改良にも着手した.具体的には,現在シリカエアロゲル1層で生成しているターゲットを複数にすることでレーザーと相互作用するミューオニウム数を増やすものである.拡散モデルを使ったシミュレーションにより信号レートを向上させられることを示し,論文として出版した.そして実験では2層ターゲットを開発し実際に信号レートが向上することを確認した. 基底状態のマイクロ波分光では,磁場を正確に測るためのシステムを開発し論文として出版した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目標である1S-2S遷移周波数の精密測定に必須の光ファイバコム開発が完了し,令和3年度までと比べて2桁周波数精度を向上させた.これにより必要十分な精度で遷移周波数を測定可能な環境が整った.さらに深紫外高出力レーザーシステムの改良も進めた結果,従来より高いビームクオリティかつ長い時間に渡って高い出力を出せるようになった. これらの改良により,世界で初めてミューオニウムの1S(F=0)→2S(F'=0)の観測に成功し,2S状態のシュタルクシフト観測にも世界で初めて成功した. 以上から,本研究課題は当初の計画以上に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は引き続きレーザー分光実験を遂行する.RALの先行研究で遷移周波数の不確かさを決めていた主要因は統計不確かさだったが,次に主要な要因は残留ドップラーシフトによるものであった.先行研究より十分高い信号レートを得られるようになったため,統計不確かさを十分下げる目処は付いている.そのため,残留ドップラーシフトを低減することが重要となる.残留ドップラーシフトを無くすためには光共振器を用いることが解決策である.2023年度は光共振器の開発および実験を進める.
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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