研究課題/領域番号 |
19H05610
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分B
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
樽茶 清悟 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, グループディレクター (40302799)
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研究分担者 |
ロス ダニエル 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (00524000)
ディーコン ラッセル 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (40552443)
松尾 貞茂 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (90743980)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
164,840千円 (直接経費: 126,800千円、間接経費: 38,040千円)
2023年度: 28,600千円 (直接経費: 22,000千円、間接経費: 6,600千円)
2022年度: 27,170千円 (直接経費: 20,900千円、間接経費: 6,270千円)
2021年度: 31,590千円 (直接経費: 24,300千円、間接経費: 7,290千円)
2020年度: 41,860千円 (直接経費: 32,200千円、間接経費: 9,660千円)
2019年度: 35,620千円 (直接経費: 27,400千円、間接経費: 8,220千円)
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キーワード | 非可換エニオン / トポロジカル超伝導 / マヨラナ粒子 / 励起子ポラリトン / ナノ細線 / スピン軌道相互作用 / 朝永ラッティンジャー液体 / マヨラナフェルミオン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は、安定で制御性の高い非可換エニオンが発現するプラットフォームとして、(1)二重ナノ細線-超伝導体接合、2次元トポロジカル絶縁体-超伝導体接合などの1次元トポロジカル超伝導体、(2)3次元トポロジカル絶縁体によるコルビノ型超伝導接合(2次元トポロジカル超伝導体)、(3)マイクロ共振器の2次元格子中に作られるポラリトン量子ホール状態などの候補系用いてエニオンの生成法を開発し、その物理的性質と量子計算への応用の可能性を探求する研究である。
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研究実績の概要 |
今年度は結合ジョセフソン接合のジョセフソンダイオード効果のゲート依存性から、各ジョセフソン接合のスイッチング電流が等しい場合にダイオード効果が大きくなることを発見した。また、アンドレーエフ分子状態の結果について、スピン軌道相互作用によって超伝導ギャップが閉じることを解明した。さらに、ジョセフソンダイオード効果が存在する領域でシャピロ応答の測定を行い、ダイオード効果の効率が大きくなること、バイアス電流がなくても有限の電圧差が形成されることを発見した。また、面内磁場の印加を結合ジョセフソン接合に行い、単一ジョセフソン接合でのダイオード効果とコヒーレント結合に由来するダイオード効果が共存する様子を観測した。 本年度は単層 WTe2 におけるゲート制御のみによるジョセフソン接合の実現を行った。その結果、デバイスの伝導チャネルの調整が可能となり、さらに磁気応答の解釈において2次元超伝導性を考慮することが必要であると示した。さらに、これまでに構築したアンドレーエフ分光法を透過率の低い接合の分光に適した高い周波数に拡張した。 励起子-ポラリトン凝縮体の光学的に駆動された回転を研究し、角運動量の増加、複数の量子化渦の発生と捕獲を観測し、原子BEC実験との密接な関連性を解明した。これらの結果は、「光攪拌器」に期待される応答に近く、渦格子の観測可能性が高いことを示している。また、動的な光学格子に対する励起子-ポラリトンの応答を詳細に調べた結果、ポラリトンのトポロジカル・フロケ状態形成の証拠として、エネルギーバンドの傾きを発見した。 理論面では、ツイスト二層グラフェンを、相互作用する量子細線の二次元ネットワークとして記述し、その電子相を研究した。その結果、分数充填量においてギャップレスカイラルエッジ状態を持つ絶縁相を実現する条件を解析し、実験で観測された量子異常ホール状態に類似することを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに得られた非局所ジョセフソン効果およびアンドレーエフ分子状態の結果を発展させることで、これまでの結果の詳細な物理機構の理解が進んだこと、さらに高周波応答による新しい現象の創発と制御に成功している。これらのことは当初計画した非局所超伝導相関の制御に必要な基礎学理と技術の確立が成功していることを意味している。また、WTe2接合におけるジョセフソン効果の実証に成功しており、技術的に大きな進展である。光学制御について、時間変調励起による励起子-ポラリトンのトポロジカル状態の開発は、当初の予想を上回るものであった。本年度成果はポラリトンのトポロジカル状態や量子ホール的な状態に関する次のステップの研究への道を明確に切り開くものである。さらに、ツイスト二層グラフェンにおける成果は、モアレエレクトロニクスやパラフェルミンを実現するプラットフォームの開発に貢献するものである。 これらのことから、研究は順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は平面ジョセフソン接合を用いた研究、特にアンドレーエフ分子状態の研究を発展させ、結合エネルギーの評価やトポロジカル超伝導物理との関係を解明する実験を進める。これらを行うことで、アンドレーエフ分子状態を用いてマヨラナゼロモードを創発する可能性の評価とそのために必要な制御技術の確立を行う。 WTe2については、スタンプされた2次元結晶界面の清浄度を向上させることで、単分子膜接合の品質をさらに向上させる。また、誘電体を薄くすることで、より短いチャネルの作製を可能にし、ゲート制御のみで作るジョセフソン接合の特性を向上させる。最後に、スタンプ法により作製したジョセフソン接合デバイスとフリップチップ共振器回路を組み合わせて、接合の電流位相関係や散逸遷移を研究する。 光制御については、より多数のポラリトン凝縮体の渦を観測するための光回転、安定なトポロジーを得るためのポラリトンフロケ格子、重いポラリトンの閉じ込めに適したトポロジカル格子を作るイオン注入、量子ホール領域での光回転ポラリトン凝縮体の数値解析について研究を行う。 理論的には、一次元ジョセフソン接合におけるスピン軌道相互作用に関連した異方性効果を検討する。この超伝導・半導体ハイブリッド系におけるアンドレーエフ量子ビットとしての特性がジョセフソン接合の物理とどのように関連するのかを調べる。並行して、トポロジカルに非自明な新しい相や物質のプローブとして、2次元および3次元バルク系の非線形量子輸送を調べる。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
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