研究課題/領域番号 |
19H05623
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分D
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡部 徹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00280884)
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研究分担者 |
竹田 修 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60447141)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
201,890千円 (直接経費: 155,300千円、間接経費: 46,590千円)
2023年度: 20,540千円 (直接経費: 15,800千円、間接経費: 4,740千円)
2022年度: 20,670千円 (直接経費: 15,900千円、間接経費: 4,770千円)
2021年度: 48,230千円 (直接経費: 37,100千円、間接経費: 11,130千円)
2020年度: 45,760千円 (直接経費: 35,200千円、間接経費: 10,560千円)
2019年度: 66,690千円 (直接経費: 51,300千円、間接経費: 15,390千円)
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キーワード | チタン / 脱酸 / リサイクル / 乾式プロセス / 希土類元素 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、世界に先駆けて新しいタイプのチタンのリサイクル技術を開発することを目的とし、申請者が有する固有の特殊技術(チタンの脱酸技術)をさらに発展させ、希土類のオキシハライドの生成反応をチタンスクラップの脱酸・高純度化に応用する。その過程で希土類オキシハライドの生成反応がチタンの脱酸能に与える影響や効果を学術的に明らかにする。
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研究実績の概要 |
チタン (Ti) は無尽蔵の埋蔵量を有し、優れた耐食性を示す金属である。また、チタン合金は極めて高い比強度を有する、夢の未来材料である。しかし、チタンは鉄 (Fe) や酸素 (O) との親和性が高く、鉄との混合酸化物である鉱石から低いコストで直接、金属チタンを製造する技術が存在しない。また、チタン製品の製造工程では、酸素や鉄などの不純物を含むチタンスクラップが多量に発生する。これらの理由から、チタン製品の価格は高く、広く一般には普及していない。本研究では、チタン製品の低価格化を目指して、チタン中の酸素を除去 (脱酸) する新規プロセスを開発し、チタンスクラップを高純度化する「アップグレード・リサイクル」の実現を目的とした。 これまでの研究で、イットリウム (Y)、ランタン (La) 、ホルミウム (Ho) 、セリウム (Ce)、ネオジム (Nd) などの希土類金属を脱酸剤として用い、希土類オキシクロライドの生成反応を利用することで、極低酸素濃度のチタンを製造できることを明らかにした。さらに、脱酸能力が低いマグネシウム (Mg) を脱酸剤として用いた場合も、希土類オキシクロライドの生成反応の利用により、チタン中の酸素を 500 mass ppm以下まで除去できることを、初めて提案・実証した。また、以上の手法を、酸化チタンの直接還元による金属チタン製造プロセスやチタンの焼結プロセスへと応用できる可能性を示した。 最近では、サマリウム (Sm)、ツリウム (Tm)、イッテルビウム (Yb) などの蒸気圧の高い希土類金属を、気相を介してチタンに供給して脱酸する新しいプロセスを提案・実証した。さらに、希土類金属に加えてハロゲンフラックスを、気相を介して同時にチタンスクラップに供給する新しいプロセスを検証した。これらの技術はいずれも将来的にはチタン製品の価格低減につながると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
イットリウム (Y)、ランタン (La)、セリウム (Ce)、ホルミウム (Ho) 、ネオジム (Nd) などの希土類金属を脱酸剤として用い、希土類オキシハライドの生成反応を利用するチタン (Ti)の脱酸の有効性を実証してきた。これらオキシハライドの熱力学的性質の評価も進み、化学熱力学に基づく系統的理解が深まりつつある。また、電気化学的に脱酸する技術も確立し、その有効性を実証した点も非常に大きな前進である。さらに、開発した脱酸技術を、チタン粉末の焼結や酸化チタンの直接還元にまで展開している。最近では、蒸気圧の高い希土類金属やそのハライドフラックスを、気相を介してチタンに供給して脱酸する、実用化を視野に入れた新しいプロセスを提案・実証した。 以上の研究の中で、当初の予想に反して、希土類金属によりチタンが汚染されることが確認された。そこで、金属チタンフィルターを介した脱酸反応の検証により、希土類金属の汚染を抑制しながら脱酸反応を進行できる新しいプロセスの開発に至った。 本研究に関する取り組みは、国内外の産学界から高く評価されている。研究代表者である 岡部 徹は、本研究を含む30年にわたるこの分野の基礎研究と技術開発への取り組みが認められ、ノルウェー科学技術大学 (NTNU) から、名誉博士号を授与された (日本人としては3人目)。さらに、岡部 徹 および 研究分担者である 竹田 修 は文部科学大臣表彰 科学技術賞 研究部門を受賞した。最近では、本研究成果に関する論文に対し、日本金属学会論文賞が与えられた。さらに、岡部 徹は、チタンをはじめとするレアメタルの精錬やリサイクルに関する研究に対して紫綬褒章を受章した。これらの受賞を含め、4年目終了時としては、当初の目標をはるかに超える研究の進展があり、今後も当初の予定をはるかに上回る研究成果が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究計画を前倒しで進める。具体的には、これまでに実証してきた希土類金属を用いる脱酸反応を電気化学的脱酸プロセスに発展させる予定である。さらに、希土類オキシハライドの熱力学的性質や物性などの基礎的データを取得する。 脱酸生成物である希土類オキシクロライドから希土類塩化物を再生するプロセスについて検討する。炭素と塩素ガスと共にオキシクロライドを高温で処理し、希土類塩化物に変換する手法については、既に研究分担者の竹田が実証しつつある。さらに、希土類オキシハライドの再生を伴いながら、電気化学的脱酸を行う新規なプロセスの設計と実証を進める。 鉄 (Fe) などの他の不純物の挙動を解析し、汚染の低減にはチタンフィルターを用いたプロセスの有効性を評価する。 さらに、蒸気圧の高いアルカリ金属やアルカリ土類金属を、希土類ハライドフラックスと気相を介して同時にチタンに供給し、置換反応を用いてチタン表面に希土類金属を生成する新しい脱酸プロセスの開発にも取り組む。蒸気圧の高い希土類金属およびその化合物の高温における物性は未解明な点が多いため、それらを詳細に検証する試みは学術的価値も極めて高い。 以上の要素技術をもとに、実スクラップを用いる場合や、大規模処理における課題解決にも取り組み、製錬プロセスで製造されるチタンの一次原料 (スポンジチタン) よりも純度の高いチタンを、スクラップから再生する革新的な新製造技術 (アップグレード・リサイクル技術) の確立を目指す。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A+: 研究領域の設定目的に照らして、期待以上の進展が認められる
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