研究課題/領域番号 |
19H05627
|
研究種目 |
基盤研究(S)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分D
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
玉田 薫 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (80357483)
|
研究分担者 |
木戸秋 悟 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (10336018)
須川 晃資 日本大学, 理工学部, 教授 (40580204)
岡本 晃一 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (50467453)
居城 邦治 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (90221762)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
193,830千円 (直接経費: 149,100千円、間接経費: 44,730千円)
2023年度: 35,100千円 (直接経費: 27,000千円、間接経費: 8,100千円)
2022年度: 36,270千円 (直接経費: 27,900千円、間接経費: 8,370千円)
2021年度: 37,050千円 (直接経費: 28,500千円、間接経費: 8,550千円)
2020年度: 39,260千円 (直接経費: 30,200千円、間接経費: 9,060千円)
2019年度: 46,150千円 (直接経費: 35,500千円、間接経費: 10,650千円)
|
キーワード | 局在プラズモン共鳴 / ライブセルイメージング / 超解像度 / ナノ粒子 / メタマテリアル / がん細胞 / 機械学習 / 画像解析 / 蛍光増強 / 細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
AIを使った画像解析技術の飛躍的進歩は医療診断分野にパラダイムシフトを起こしつつある。大量の画像を高速で処置できるようになった今、次に必要とされるのは、高度情報処理技術に見合った高品質の画像情報である。我々は、独自技術である金属微粒子自己組織化により作製した「局在プラズモンシート」の光閉じ込めおよび蛍光増強効果により、ナノ界面(埋もれた界面)における生細胞の分子ダイナミクスを超解像度で高速イメージングできる技術開発を進めている。細胞接着界面における分子レベルでの反応を明らかにすることで、基礎生化学・医学的課題に対して新たな情報を提供することを目的とする。
|
研究実績の概要 |
課題1では、蛍光増強効果を利用した細胞観察により適したプラズモンナノシートの作製に向けて、ナノディスク(円盤状粒子)の合成に注力した。具体的には、昨年度開発した水-ブタノール混合溶媒系での界面での微粒子自己組織化現象を利用した円形銀ナノプレートの自己組織化と、超薄円盤状金ナノ粒子の温度応答性自己集合化に成功した。新たにEmpty liquid相(電場増強効果はあるが異常透明性を示す金属微粒子からなるネットワーク構造)を発見した。
課題2では、細胞の接着・伸展における細胞骨格アクチンの動態がプラズモンシート上でより鮮明に観察できることを確認し、これにより正常・がんまたはがんの悪性度を接着界面でのアクチン分布パターンにより識別することに成功した。 さらに細胞接着ナノ界面の機械的変形特性の検知によるがん細胞の診断を試み、これに成功した。細胞膜糖衣の厚みはがん細胞において厚く、糖衣近傍は局所的にpHが低下する。これに着目し、細胞膜近傍の局所pH分布をpH応答性蛍光分子固定化基板上で蛍光イメージングすることで、がん細胞と正常細胞の判別をした。
課題3では、次年度の最終年に向けて、機械学習専用の計算機機材を導入し、シート上での高解像度蛍光観察データを用いた機械学習による細胞自動診断法の開発に着手した。pH変化によるがん細胞の診断についても、得られた細胞接着界面の蛍光観察像をpH分布に変換表示する画像処理アルゴリズムを開発することで、細胞膜糖衣の界面おける垂直変形性を診断情報として取り出すスキームを開発した。一方で、ペロブスカイト量子ドットを使ったイメージング法の開拓に向けて、スピンコートによる粒子単層膜の作製法を確立した。ペロブスカイト粒子を用いた国際共同研究では、Tammプラズモン上にペロブスカイト量子ドット単層膜を配置した構造からの発光特性について論文にまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1、課題2、課題3ともに順調に進展している。課題1:超解像度超高速ライブイメージング用局在プラズモンシートの作製では、電磁気計算において最も大きな電場増強効果が予想される極薄ナノディスクの合成に成功し、さらにこれまで困難であった自己組織化も可能になり、球状粒子を超える強い界面増強蛍光を得るという目標に達成しつつある。課題2:細胞接着ナノ界面の創製と分子ダイナミクスの直接観察では、プラズモンシート上での細胞動態観察において、正常・がんまたはがんの悪性度を識別するという当初目標を達成することができた。この成果について、本年度医学系学会を含む複数の国内外学会で招待講演を行い、現在論文投稿中である。またメカノバイオロジーによってがん細胞の診断を無染色で行う目標についても、今回細胞近傍の局所pH分布を計測するという新たなアイデアにより達成することができた。課題3幹細胞・がん細胞のハイスループット細胞膜活動診断法の確立では、機械学習による自動検出等に向けた準備が、プラズモンイメージング並びにメカノバイオロジー研究の両方で順調に進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年として、課題1については、異形ナノ粒子の自己組織化に関するレビュー論文をまとめるとともに、極薄ナノディスク粒子のイメージング応用への実効性を試験する。さらに、自己組織化シートのイメージング以外の応用についても合わせて検討する。例えば、新たに発見したEmpty liquid相のデバイス応用に関する検討を進める。自己組織化法としても、気/水界面へのナノ物質誘引技術をさらに発展させるとともに、高解像度イメージングには不適当だが、特殊な光学効果が得られることがわかってきたトップダウン型の金属微細構造作製技術についても、電磁気シミュレーションとともに多様な応用可能性を模索する。 課題2については、独自開発の蛍光分子を使った迅速かつ簡便な蛍光標識法について新たに検討項目に加えることで、当該技術の実装的価値を高める(当初計画外)。さらにポリマー薄膜を界面変形層として用いる無染色細胞の接着牽引挙動による細胞診断を完成させるとともに、国際共同研究にて実施してきたフルカラーペロブスカイト量子ドットの細胞イメージングへの応用も合わせて完成を目指す。 課題3では、当初計画に沿って、プラズモンシート上各種細胞の接着面の静止画または動画を用いた機械学習による各種細胞の「ハイスループット細胞活動診断システム」を完成させるとともに、局在プラズモンシートの市販化(事業化)に向けた検討に着手する。
|
評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
|