研究課題/領域番号 |
19H05643
|
研究種目 |
基盤研究(S)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分G
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉村 崇 名古屋大学, 生命農学研究科(WPI), 教授 (40291413)
|
研究分担者 |
大川 妙子 (西脇妙子) 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30432230)
中山 友哉 名古屋大学, 高等研究院(農), 特任助教 (30866661)
大竹 愛 (四宮愛) 基礎生物学研究所, バイオリソース研究室, 助教 (60452067)
中根 右介 名古屋大学, 生命農学研究科(WPI), 特任講師 (40792023)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
199,550千円 (直接経費: 153,500千円、間接経費: 46,050千円)
2023年度: 39,260千円 (直接経費: 30,200千円、間接経費: 9,060千円)
2022年度: 39,260千円 (直接経費: 30,200千円、間接経費: 9,060千円)
2021年度: 39,260千円 (直接経費: 30,200千円、間接経費: 9,060千円)
2020年度: 45,630千円 (直接経費: 35,100千円、間接経費: 10,530千円)
2019年度: 36,140千円 (直接経費: 27,800千円、間接経費: 8,340千円)
|
キーワード | 光周性 / 季節繁殖 / メダカ / ケミカルゲノミクス / 季節適応 |
研究開始時の研究の概要 |
動物は日照時間や温度の変化を感知し、様々な生理機能や行動を変化させることで、環境の季節変動に巧みに適応している。カレンダーを持たない動物がこれを成し遂げる仕組みは謎である。本研究では洗練された季節適応能力を持ち、緯度によって遺伝的に異なる季節適応戦略を身に着けたメダカをモデルとして、動物の季節適応戦略を解明する。また冬季にうつ病を発症する冬季うつ病の発症機構は不明である。本研究では冬季のうつ様行動の発現機構を解明するとともに、これを制御する分子を開発する。
|
研究実績の概要 |
生物をとりまく環境は季節に応じて劇的に変化する。生物は毎年繰り返される日長、温度、降水量などの環境の季節変化により良く適応するために、外界の変化を感知し、繁殖、渡り、冬眠などの生理機能や行動を制御している。ヒトも例外ではなく、代謝、免疫機能、気分、病気のリスクなどが季節によって変化する。本研究では洗練された季節応答性を示すだけでなく、生息地域の緯度によって遺伝的に異なる季節適応能を示すメダカをモデルとすることで、動物の季節適応の遺伝基盤を解明するとともに、摂食、代謝、繁殖活動などの生理機能の年周リズムを支える分子基盤を明らかにすることを目的とした。さらに冬季のうつ様行動の発現機構を解明し、それを克服する分子を開発することを目的とした。令和4年度は臨界日長をつかさどると考えられる候補遺伝子の変異体を作出し、表現型解析を開始した。臨界温度の制御機構に関しては臨界温度が異なる2集団の遺伝解析と遺伝子発現解析から見出した候補遺伝子産物が、温度によって液-液相分離することで臨界温度が規定されている可能性を見出し、解析を進めている。また臨界日長、臨界温度の異なる2集団を、冬の環境が厳しい函館の半自然条件下に暴露して共通圃場実験を実施した結果、北の集団では南の集団に比較して、臨界日長、臨界温度の違いによって繁殖の開始時期が遅れることを明らかにした。また全身の様々な組織における季節適応機構を明らかにするために、アカゲザルの全身組織の1年間のトランスクリプトーム解析を実施し、様々な組織で年周リズムを刻む遺伝子を同定するとともに、それらの年周リズムを刻む転写因子を同定した。さらにこの季節適応制御転写因子についてノックアウトマウスを作成し、表現型解析を開始した。また、冬季のうつ様行動を支配する遺伝子を化学遺伝学の手法から同定することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨界日長、臨界温度の制御機構の解明については、当初の計画通り、候補遺伝子の絞り込みに成功し、それら候補遺伝子の変異体の機能解析も進めており、順調に研究が進んでいる。年周リズムの駆動原理の解明についても空間的トランスクリプトーム解析、一細胞RNA-seq解析、バイオインフォマティクス解析が終了しており、当初の計画どおりの進展がみられている。また当初の計画を上回り、アカゲザルの全身の80組織に由来する1年間の924個の時系列サンプルについての網羅的トランスクリプトーム解析も終了し、全身組織で季節変動する遺伝子を同定することに成功している。さらに各組織に共通する季節変動遺伝子を制御すると考えられる転写因子についてノックアウトマウスの作出を完了し、表現型解析にも着手している。冬季のうつ様行動を改善する化合物の開発についても化学遺伝学の手法から新たな創薬標的タンパク質を同定し、化合物スクリーニングの系を立ち上げている。
|
今後の研究の推進方策 |
臨界日長の制御機構の解明については、候補遺伝子の変異個体について、機能解析が終わり次第、論文をまとめて発表する。臨界温度の制御機構の解明については、これまでの解析によって候補タンパク質が温度依存的に液―液相分離(LLPS)することで臨界温度を規定している可能性が示唆されているので、温度依存的なLLPSの機能解析を引き続き検討し、それらの解析が終わり次第、論文を発表する。年周リズムの制御機構の解明については、解析が完了しており、現在論文を準備中であるので、論文が完成し次第、投稿する。アカゲザルの全身組織の網羅的トランスクリプトーム解析についても解析が順調に進んでおり論文も執筆中である。鍵となる転写因子のノックアウトマウスの表現型解析が終わり次第、論文を発表する予定である。冬季のうつ様行動を制御する化合物の探索については、新たに発見した創薬標的のハイスループットスクリーニングで新規な化合物を同定する。
|
評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A: 研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる
|