研究課題/領域番号 |
19H05661
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分J
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
廣瀬 通孝 東京大学, 先端科学技術研究センター, 名誉教授 (40156716)
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研究分担者 |
鳴海 拓志 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (70614353)
北川 智利 立命館大学, BKC社系研究機構, 教授 (60336500)
広田 光一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (80273332)
雨宮 智浩 東京大学, 情報基盤センター, 教授 (70396175)
谷川 智洋 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任教授 (80418657)
青山 一真 群馬大学, 情報学部, 准教授 (60783686)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
200,460千円 (直接経費: 154,200千円、間接経費: 46,260千円)
2023年度: 32,630千円 (直接経費: 25,100千円、間接経費: 7,530千円)
2022年度: 37,180千円 (直接経費: 28,600千円、間接経費: 8,580千円)
2021年度: 38,350千円 (直接経費: 29,500千円、間接経費: 8,850千円)
2020年度: 40,040千円 (直接経費: 30,800千円、間接経費: 9,240千円)
2019年度: 52,260千円 (直接経費: 40,200千円、間接経費: 12,060千円)
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キーワード | 融合身体 / 身体図式 / バーチャルリアリティ / we-mode / スキル伝達 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,バーチャルリアリティ空間で複数人が一つの身体(融合身体)を使用して私(I)でも我々(We)でもある身体運動を遂行する環境での検証から,共同行為が自らの寄与によるという感覚(行為主体感)が生じるメカニズムと,身体動作遂行に必要な潜在的知識(身体図式)が変容する条件とそのメカニズムを明らかにすることである.さらに,この知見に基づいて,行為者間の無意識的な意図伝達や動作同期が起こる融合身体の構成法を確立し,融合身体を介して教師から学習者への身体スキルを効率的に転移させることが可能な新しい身体スキル伝達手法を実現することを目指す.
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研究実績の概要 |
本年度は,部位選択型融合身体において部位ごとの融合比率の変化が与えるユーザの行動への影響を検討した.全身運動であるボウリングの投球動作を課題とし,上半身と下半身の寄与率の異なる条件で運動の評価を行なった.その結果,上半身と下半身の寄与率(動作への関与の程度)の差が融合身体の動作に影響を与えることが示唆された.また,融合身体における2名の視線方向を揃える手法として,学習者の視野のうち教師の見ている視野以外にブラーを加え,無意識に鮮明な領域への視点移動を促す手法を提案した.提案手法と明示的に視点移動を指示する他の3つの方法を比較したところ,提案手法は視線方向の一致精度では劣るものの,他の手法に比べて認知負荷が小さく,素早く視線変更ができることが示され,運動スキル学習に向くことが示唆された. 昨年度までに融合身体では二者間のリアルタイムな相互作用が運動効率を高めることを示唆する結果を得てきた.一方先行研究では,他者と協調関係にあると信じているだけでも協調行動が変化することが示唆されている.他者との融合時にオンラインとオフラインの教示を入れ替えたところ,教示によらずオンライン条件でオフライン条件よりも運動効率が向上した.この結果は,融合身体における二者間のオンラインの相互作用が運動効率を高めている可能性を強く支持する. 応用面では,様々なタスクにおいて融合身体を用いた運動スキル学習の効果を検証したところ,目標に追従して手を動かすような単純なタスクでは効果が薄いものの,左右の手でそれぞれ別のタスクをおこなうデュアルタスクやシンボルが提示されて対応する運動をする宣言的記憶の関わるタスクではVRを用いた既存の学習手法の約2倍効率的に学習ができ,また学習後の定着・保持も良いことが明らかとなった.この成果の一部に関して,IEEE VR 2023 Best Paper Awardを受賞している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
融合身体は単純な身体運動タスクよりも,認知付加の高い複雑な身体運動タスクの学習に向いていること,学習段階としては複雑なタスクを意識的に遂行する段階から無意識的に遂行できるようにする自動化のフェーズにおいて有効であること,学習直後から1週間後の学習効果の保持において他の手法よりも有利であること等が示され,融合身体は効率的な身体スキル伝達を実現することが示された.この知見が基礎となり,今後は実フィールドで活用するべく検討や,より効率的なスキル伝達を実現するための条件の解明に取り組める.そのため,現時点では順調に研究が進展しており,また,今後当初想定以上の成果が得られる可能性もあると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
タスクの種類に応じた融合身体の有効性をさらに検証していくとともに,これまでに得られている融合身体の有効性を実フィールドで活用するための検討や,より効率的なスキル伝達を実現するための条件の解明,融合身体における二者間のオンラインの相互作用が運動効率を高める効果の機序の解明等に取り組んでいく.
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A+: 研究領域の設定目的に照らして、期待以上の進展が認められる
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