研究課題
特別研究員奨励費
渦鞭毛藻は海産プランクトンの主要構成群として知られる微細藻類である。渦鞭毛藻は高度な多様性を有しているほか、赤潮や貝毒の原因となる種も数多く含まれる。水圏環境における渦鞭毛藻の生物学的意義や産業的重要性から、渦鞭毛藻を宿主とするウイルスに関する知見の集積は重要な課題であるといえるが、その詳細は明らかになっていない。本研究では、渦鞭毛藻に感染するウイルスの進化履歴を明らかにすることを目的とする。海底堆積物や赤潮海水から単離された渦鞭毛藻ウイルスがどのような変化を辿ってきたのか現在から過去に遡って解析することで新たな学問分野「環境遡及ウイルス学」の創出を目指す。
令和3年度は、下記2項目の成果が得られた。① 渦鞭毛藻ウイルスHcRNAVの水圏環境中における多様性をDegenerate PCRおよびアンプリコンシークエンスを用いて明らかにした ②FLDS法を用いてRNAウイルスの配列解析を行い、当該手法の堅牢性を確認するとともにHcRNAVの末端配列を含めた全配列を決定することに成功した。①:昨年度は渦鞭毛藻ウイルスHcRNAVをMajor capsid protein(MCP)遺伝子に特異的なプライマーセットを用いて海底堆積物から増幅し、年代測定結果と合わせて「HcRNAVの水圏環境における過去の繁栄の履歴」を明らかにした。本年度は、HcRNAVとそれに近縁なウイルスも含め多様な配列を水圏環境から増幅するため、MCP領域を対象としたdegenerate primerを設計し、海底堆積物由来RNAに適用した。その結果、HcRNAVの属するAlvernaviridae由来のウイルス配列のみならず、近縁ウイルスの配列を含めた多様なウイルス配列が得られた。増幅されたHcRNAV由来配列に注目すると、保存的・可変的な配列に分けられ、それらはウイルスキャプシドの構造的な特徴とリンクしていることが見出された。本成果は国際誌に投稿し、受理された(Takahashi et al., Microbes and Environments, in press.)。②:dsRNAウイルスの探索手法であるFLDSを用いて、HcRNAVの全長配列を取得した。本手法のフィデリティーをラビリンチュラ感染性RNAウイルス(AuRNAV)を用いて確認し、HcRNAVについてはこれまでRACE法で見逃されてきた末端配列を決定することに成功した。本成果は現在国際誌への投稿準備中である。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Microbes and environments
巻: 37 号: 5 ページ: n/a
10.1264/jsme2.ME21075
Sci Total Env
巻: 770 ページ: 20-20
10.1016/j.scitotenv.2021.145220
http://www.kochi-u.ac.jp/information/2021012100012/