研究課題
特別研究員奨励費
生物の形態は多様であるが、無秩序に多様化しているわけではなく、様々な制約下で進化していると考えられる。また、もし制約の一部が解放されれば劇的な多様化が生じる可能性がある。そこで、本研究では制約の解放が多様化をもたらすという仮説を巻貝をモデルとして検証する。具体的には、貝殻の「巻く」という制約に着目し、特に殻形態の多様性が著しい水棲目貝類を用いて、長期的な系統パターンの再構築から、殻の巻くという制約が解放された形態である笠型タイプを経由して形態の爆発的な多様化が発生したことを系統学的解析と交配実験、飼育実験などを用いて検証する。
本年度は、昨年度実施できなかった遺伝子解析の外注を行い、次世代シーケンサーを用いたヒラマキミズマイマイとカドヒラマキガイを含むヒラマキガイ類の遺伝子データを取得し、高性能計算機で解析を行った。結果として、琵琶湖のカドヒラマキガイ類は単系統であるが、極めて進化的に新しい系統であることが推定された。また、標本を用いた形態解析では、水棲上目の貝類を幅広く集め、形態データを写真撮影により取得した。さらに、巻貝類(腹足綱)全体の巻型についても大まかなカテゴリカルデータとしてmolluscabase及び図鑑や公的データベースなどを用いて集計した。また、傘型種であるカワコザラ類については日本各地から幅広く標本を集め、形態を検討した。結果として、水棲上目及び巻貝類全体について、傘型化が頻繁、かつ独立に進化していること、及び巻型の多様な系統は巻貝類の中でも限られており、急激に多様化する、という予想通りの結果が得られた。一方で、巻貝類、水棲上目のいずれにおいても、網羅率と信頼性の高い系統樹を得ることが現状困難であるため実施できる解析が限られ、巻型多様化と単純化の時間的順序については判然としなかった。以上から、各系統における信頼できる系統関係の推定が最重要のタスクであると考えられる。なお、一部については本研究でも実施し、すでに成果として公表されている。また、傘型種であるカワコザラについては、明らかに逆巻化している個体を発見することは出来なかったため、巻きの逆転に関しては頻度の低さから、数年という短期間で研究することは難しいと考えられる。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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