研究課題
特別研究員奨励費
ナガサキアゲハやシロオビアゲハはメスにのみ擬態型と非擬態型の二型があり、オスは単型で非擬態型である。二種の多型は、同一のゲノム領域で制御されていると考えられる。この領域は複数の遺伝子が密に連鎖したスーパージーンになっている。しかし、二種の原因領域は染色体逆位の有無や配列について違いがあり、擬態多型が近縁種間で複数回独立に進化したことが示唆されている。本研究はナガサキアゲハとその近縁種を用い、擬態関連遺伝子の系統樹作成、分岐年代推定、遺伝子機能解析を行う。また集団遺伝解析や野外実験によって多型維持機構を検討する。以上により、スーパージーンによる多様性の創出と維持機構の総合的理解を目指す。
ナガサキアゲハやシロオビアゲハはメスにのみ擬態型と非擬態型の二型があり、オスは単型で非擬態型である。2種の多型は、同一のゲノム領域で複数の遺伝子によるスーパージーンによって制御されていると考えられる。(1)スーパージーンの起源、進化メカニズムを明らかにするために、既存のゲノムリシーケンスデータを用いてナガサキアゲハ、シロオビアゲハ、アカネアゲハの擬態原因領域のゲノム構造を比較した。これまでの成果や先行研究とあわせてレビュー論文を作成した。シロオビアゲハでは擬態原因領域に逆位があるが、ナガサキアゲハやアカネアゲハには逆位はないことがわかっている。しかし、連鎖不平衡となる領域について、左側の境界は逆位の有無にかかわらず3種でほぼ一致することがわかった。(2)ナガサキアゲハの擬態原因領域にあるdsxについて、発現解析やRNAiによる機能解析を行った成果を論文としてまとめた。擬態型dsx-Aは後翅や腹部での擬態形質、非擬態型dsx-aは非擬態メスの後翅の形成に関わることを示唆する結果を得た。擬態原因領域にある他の遺伝子については後翅での発現は確認したが、擬態紋様性への関与は確認されていない。(3)ナガサキアゲハの多型の維持・消失メカニズムを明らかにするために奄美、沖縄、本州、台湾などの個体群のサンプルのゲノムリシーケンスデータを取得して解析を行った。また、ナガサキアゲハの沖縄や奄美での擬態型の頻度や擬態メスと非擬態メスに対するオスの選好性などを調べた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Philosophical Transactions of the Royal Society B
巻: - 号: 1856 ページ: 20210198-20210198
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