研究課題
特別研究員奨励費
植物ウイルスRed clover necrotic mosaic virus (RCNMV)は、宿主の対ウイルス防御機構の1つである活性酸素産生を利用して増殖するという特異な増殖機構を持つ(Hyodo et al. 2017)。本研究ではこのウイルスの増殖機構で重要な働きを担うp27タンパク質に着目し、そのうち立体構造が不定で機能未知の disorder領域の機能解析に取り組む。具体的には、モデル植物シロイヌナズナの野生系統コレクションを対象に、p27に変異を持つRCNMV集団を感染させ、RNA-Seqとゲノムワイド関連解析を行ない、ウイルスー宿主相互作用に重要なウイルス側アミノ酸配列・植物側遺伝子群の両者の同定を目指す。
今年度は、前年度の結果を受け、シロイヌナズナの個体レベルに加えてプロトプラストレベルでのウイルス接種実験法の確立と、接種実験を行った。接種に用いるための蛍光タンパク質を付与したウイルスRNA集団、標的遺伝子に変異を付与したウイルスRNA集団は、それぞれの感染性クローンからのin Vitro転写により作成した。接種対象のプロトプラストは、前年度の検討を踏まえ、剃刀を用いて葉を裁断する方法(Chopping法)により、大量に回収できる状況になった。接種はポリエチレングリコールを用いて行い、接種のための諸条件(接種手順、接種源のウイルスRNA量、接種後の培養条件等)の検討を行った。検討開始当初は、プロトプラスト生存率は高いものの接種効率が低い問題が生じたため、専門家のアドバイスを受け条件検討を行った。検討の結果、PEG溶液や接種源RNAとの混合を穏やかに十分回数行うこと、接種源の量を十分にとることが感染成立や感染率の上昇に重要であることが明らかになった。これにより、接種を行ったプロトプラストが、接種後48時間後も高い生存率を示す条件が得られたため、その後の実験に用いることにした。遺伝子発現解析の結果、ウイルス(RCNMV)の増殖が最も盛んである17℃において、植物の複数の遺伝子についてウイルス感染による発現変動が示唆された。これらの遺伝子は先行研究のタンパク質の解析からもウイルス増殖との関連が示唆されているものであり、今後、RNAレベルとタンパク質レベルでの応答の比較研究が期待される。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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