研究課題
特別研究員奨励費
沿岸域や半閉鎖性海域に広く分布する海草アマモ(Zostera marina)によって形成されるアマモ場では、複雑な動物―植物の相互関係や、塩分など環境勾配による非生物的要因―生物の関係がみられる。しかし、環境勾配は大雨などの攪乱により変化する可能性があり、生物に大きなストレスを与えること、生物間の関係への影響などが懸念される。そのため、本研究では、室内実験、野外調査、生態系モデル解析を併用し、北海道東部の厚岸湖や能取湖、また北欧のバルト海などのさまざまな空間スケールで塩分勾配とアマモ場生物の関係を解明する。
当該年度は、当初予定していたスウェーデンへの渡航が新型コロナウイルス感染拡大をうけて中止となったため、予定していた実験や野外調査が行えなかった。しかし、昨年度に行った塩分変動が動植物群集の生物間相互作用に与える影響を検証した実験の結果をもとに、昨年度の研究を発展させる形で、無脊椎動物の藻類分解機能が塩分変動に受ける影響を評価する室内メソコスム実験を計画し、実行した。具体的には、8月には厚岸臨海実験所において室内実験の水槽などをセットアップし、9月上旬に厚岸湾において実験に用いる植食性動物(オホーツクヘラムシIdotea ochotensisおよびコウダカチャイロタマキビLacuna decorata)と藻類(クロハギンナンソウChondrus yendoiおよびアオサUlva spp.)を採取した。9月中旬から塩分変動実験を行い、動物の摂餌量や藻類の分解率を測定した。10月にはデータの整理を行い、3月には実験結果の解析を行った。この実験の結果は、昨年度の実験結果を補足する形で重要であり、今後学会での発表や論文の執筆を行う。昨年度に行った実験結果については、現在論文の査読中である。また、実験結果は当該年度の8月に国際学会(International Seagrass Biology Workshop)にて発表を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大のため学会は延期となり、発表は行えなかった。2018年度に行った厚岸湖・能取湖のアマモ場動植物の季節動態については、解析結果を3月に国内学会(日本生態学会)にて発表を行い、論文執筆を行っている。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
Ecological Research
巻: 35(1) 号: 1 ページ: 61-75
10.1111/1440-1703.12086