研究課題
特別研究員奨励費
薬物代謝酵素チトクロームP450には遺伝的多型性が存在し、薬物動態の違いに起因して薬効や副作用発現に著しい個人差が生じることがある。3500人の日本人全ゲノム配列データベースを利用して、代表的なP450の新規バリアント機能変化の解析を行い、酵素反応速度論的パラメータを算出する。さらに、遺伝子型から表現型を高精度に予測する薬物代謝酵素活性パネルを創出し、従来よりも効果的かつ安全性の高い個別化薬物療法への応用を目指す。
医薬品による治療効果や副作用発現に個人差を及ぼす一因として薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)の遺伝的背景が近年注目されている。本研究では、ヒトにおける薬物動態をより正確に反映するため、哺乳動物細胞株への発現ベクターの導入条件、活性型CYPの形成に必須である補因子(鉄イオン及び5-アミノレブリン酸)の添加条件と、CYP活性に必須となる電子伝達系補酵素(チトクロームP450オキシドレダクターゼ及びシトクロムb5)の共発現条件を検討し、高活性CYP発現系を構築した。本発現系は従来法と比較して6~11倍の酵素活性を示し、ヒト肝ミクロソームタンパク質と同程度の発現量及び酵素活性を実現できたため、ヒトにおけるCYPの特性を評価するツールとしての応用が期待される。本研究においてはさらに、遺伝子多型に由来するCYP2C9及びCYP3A4バリアント酵素の網羅的解析を行い、いずれの遺伝子多型が酵素活性に影響を及ぼすかを明らかにし、、in vitro試験により得られた酵素反応速度論的パラメータの情報を利用して、その臨床応用を指向したCYP3A4及びCYP2C9遺伝子型に基づく酵素活性予測パネルを構築した。今後は、それらのパネルの有用性の検証や患者個々の遺伝子多型情報をいかにして臨床応用するかなど様々な課題が残っている。本研究成果は、患者個々の薬物動態、薬効あるいは副作用発現の遺伝的個人差を考慮した医薬品の選択や投与設計を行う未来型医療の実現のための一助となることが期待される。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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