研究課題
特別研究員奨励費
ステロイドグリコアルカロイド(SGA)は分子内に窒素原子を含むステロイド配糖体の総称であり、ナス科植物に広く含まれる化合物である。SGAはいずれも生物に広く毒性を示すため、防御物質の一つであると考えられている。SGAの代表的なものとして、ジャガイモの芽に高蓄積するα-ソラニンや、トマトに含まれるα-トマチンが挙げられる。生産するSGAは植物種ごとに異なっており、その構造は非常に多様である。本研究はナス科植物がどのようにして多様なSGA生合成系を進化発展させたのか、また多様なSGA生産のナス科植物における生物的意義についての研究である。
本研究では、ナス科植物で生産される含窒素ステロイド配糖体であるステロイドグリコアルカロイド (SGA)の構造多様性に着目し、植物がなぜ・どのようにして多様な代謝産物を生産するのかを明らかにすることを目的としている。これまでに、DPSがジャガイモにおけるソラニダンSGAであるα-ソラニン生合成の鍵酵素遺伝子であることを明らかにしている。さらに、ソラニン型SGAを生産しないトマトにもDPSに高い相同性を示す遺伝子が1つだけ存在し、本遺伝子の組換え酵素はDPSと同様の活性を示した。また、この遺伝子はトマトにおいてほとんど発現しておらず、遺伝子発現制御がSGAプロファイルの差を生む重要な要因であると考えられる。ジャガイモではDPS遺伝子に高い相同性を示す遺伝子が多数ゲノム上にタンデムに並んで存在している。このことからジャガイモの進化の過程でDPS祖先遺伝子の重複が起こり、高発現するDPSを獲得しソラニダンSGAを生産するに至ったと考えられる。本年度は、DPSの遺伝子の進化的起源をさらに考察するためにナス属の作物であるナスのゲノムを調査した。その結果ナスにもDPSに高い相同性を示す遺伝子が1つ存在し、その遺伝子はほぼ発現していないことが明らかとなった。組み替えの機能解析の結果、DPSと同様の活性を示した。ナスとトマト/ジャガイモの種分化はナス属の種分化の中で最も古くに起こったイベントであると考えられているため、DPSの祖先遺伝子はナス属の進化の基部において既に存在していたことが示唆された。DPSの同定および以上の結果等をまとめて論文を投稿し受理された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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