研究課題
特別研究員奨励費
狂犬病は、長い潜伏期間と致死的な神経症状を特徴とし、狂犬病ウイルスの感染により引き起こされる人獣共通感染症である。この狂犬病は潜伏期間中に複数回ワクチンを接種することで、発症を予防することが可能である。しかしながら、ワクチンが高価なために発展途上国に十分普及しておらず、狂犬病による死者数は未だ年間約6万人近く報告されている。そのため、ワクチン接種による暴露後発症予防法にかわる、安価な発症予防法の開発が求められている。この開発に必要な基盤情報の蓄積を目指し、本研究では、狂犬病ウイルスの潜伏場所である末梢組織におけるウイルスの感染動態の解明を行う。
本研究では、狂犬病ウイルスの末梢における新規感染経路を解明することを目的としていた。まず、狂犬病ウイルスの新規感染経路を解明する上で有用な実験系の確立に成功した。具体的には、Cre蛋白質発現狂犬病ウイルスを、Cre蛋白質依存的に赤色蛍光蛋白質を発現するマウスに接種することで、ウイルスの感染細胞を高感度に検出することが可能となる方法を確立した。なお、Cre蛋白質発現ウイルスは、一種類のウイルス株だけでなく、複数の実験室株および野外流行株において確立された。さらには、本ウイルス株については、伝播能を有する株および欠落した株の二種類が作出された。これらの結果、狂犬病ウイルスが普遍的に呈する体内動態を、より詳細に検討できることとなった。すなわち、本研究によって確立された実験系は、今後の狂犬病ウイルスの体内動態および病原性発現機序の研究に有用な技術になると思われる。一方で、本実験系を用いることで、末梢における標的細胞と疑われる細胞の検出に至ったものの、その細胞種の同定が困難であった。その解決策として、ウイルスのCreの発現量を増加させることが有効な方法であると考えられた。そこで、Creの発現量が増加した遺伝子改変ウイルスの作出を試みた。本年度、このウイルスの確立に成功し、マウス感染実験に応用可能な状況が整っている。今後、本ウイルスを用いて、ウイルスの感染細胞を検出することで、狂犬病ウイルスの末梢における新規感染経路が明らかになることが期待される。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Viruses
巻: 12 号: 9 ページ: 914-914
10.3390/v12090914