研究課題
特別研究員奨励費
選好に関する研究では単純接触効果などの選好を上げる現象が研究されてきたが,選好が低下することを検討した研究は少ない。そこで,本研究では自身が発見した,同一空間内に同じ顔の人物(多重重複顔)が存在すると不気味さが喚起される「クローン減価効果」という選好低下の現象を通して,予測とは異なる対象による選好形成の認知的機構の解明を目指す。
本研究は選好がどのように形成されるのかということについて,選好が低下する要因に着眼し,同一空間内に全く同じ顔の人物(多重重複顔)が複数存在すると不気味さが喚起される「クローン減価効果」という現象を切り口に,予測過誤による人物への選好低下という観点から検討するものである。本年度は,これまでの研究成果を基にこれらの知見を基に多重重複顔を観察してから不気味さという印象が形成されるまでの認知的処理過程,すなわちクローン減価効果の生起メカニズムのモデル構築を行った。そのモデルによって,多重重複顔は,まず顔認識のプロセスによって処理された後にアイデンティティ処理プロセスによって処理されるが,それと同時に多重重複顔は記憶に基づく知識システムによって支えられている現実世界の予測処理プロセスにおいて予測エラーを引き起こし,その情報に基づいて不気味印象が形成されることを提案した。本研究は,予測過誤対象である多重重複顔がネガティブな印象を形成し,それがどのようなメカニズムによって形成されるのかを検討することで,新しい科学技術の急速な導入について心理学的観点から考慮することを促している点で社会的意義があるものと言える。また, 一連の研究成果から,顔の選好形成にアイデンティティ処理が関与することが明らかとなり,選好が低下する要因を明らかにした本研究は,選好が上昇する要因を明らかにしてきた先行研究とは一線を画すものであり,その点で学術的意義も大きいものであるといえる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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消費者行動研究
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巻: accepted in principle