研究実績の概要 |
真核生物においてmRNAの5′末端にはキャップ構造が付与されるが、キャップ構造に続く5′末端領域に起こるメチル化修飾によって新たな機能が付与される。このようなメチル化修飾の中で、5′末端の1塩基目に存在するN6,2′-O-ジメチルアデノシン(m6Am)修飾のN6-メチル基の生合成過程や生理学的意義は未解明であった。これまでの研究過程において、私はm6Am修飾のN6-メチル化を担う新規メチル化酵素としてCAPAMを同定し、生化学的解析およびX線結晶構造解析を通して、CAPAMの基質特異性や基質RNA認識機構、メチル基転移反応機構を明らかにしてきた。またCAPAMおよびm6Am修飾が遺伝子発現に与える影響を解析したところ、mRNAの安定性にはほとんど寄与していないが、CAPAMおよびm6Am修飾はmRNAの翻訳効率に貢献していることが示唆された。これまでの研究成果はScience誌に報告している(Akichika, Hirano, et al., Science 363 (2019))。 このような研究背景のもと、本研究ではm6Am修飾がどのようにmRNAの翻訳制御に関与しているのか、その分子機構の解明を目指した。m6Am修飾がどのようなタンパク質によって認識されることで機能を担っているのか探索した。共同研究を行い、m7Gpppm6Am構造に特異的に濃縮されたタンパク質が2種類、m7GpppAm構造に特異的に濃縮されたタンパク質が1つ得られた。現在はこれらのタンパク質がin vivoおよびin vitroにおいてどのようにmRNAと相互作用することでmRNAの翻訳効率に貢献しているのか解明することを目指している。
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