研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、①黄色ブドウ球菌が乳房内に侵入した段階において、黄色ブドウ球菌の制御を可能にする乳房炎ワクチンを構築すること、および②黄色ブドウ球菌の細胞内感染機序を解明し、乳房炎ワクチンの乳房炎発症に関するプロセスに与える影響を精査することを目的としている。具体的には、宿主抗体によって誘導される黄色ブドウ球菌の増殖阻害に関する分子を特定することで、特定抗原に対する抗体産生の効果的な誘導によるワクチンの改良を目指す。また、本研究ではGFPを強制発現する黄色ブドウ球菌を作出し、乳房炎in vivoモデルに供することで、細胞内感染を受ける宿主細胞を特定する。
ウシ乳房炎は黄色ブドウ球菌などの病原微生物が引き起こす感染症であり、酪農現場に甚大な被害をもたらす。治療のための抗生物質の使用は乳汁の出荷停止や薬剤耐性菌の出現の原因となるため、薬剤に頼らない疾病防除が重要であり、特にワクチンの質の向上が必須である。先行研究では、既存の乳房炎ワクチンを模倣し、黄色ブドウ球菌(死菌)をウシに免疫することで産生される、黄色ブドウ球菌の様々な分子を認識する抗体の中で、黄色ブドウ球菌の増殖そのものを直接的に制御する、中和活性を有した抗体が含まれているか否かを検証してきた。その結果、黄色ブドウ球菌特異的ウシIgG抗体との共培養により、黄色ブドウ球菌のCFU数が有意に減少するという結果を得ていた。本研究の目的は黄色ブドウ球菌特異的ウシIgG抗体による黄色ブドウ球菌の増殖抑制に関与する抗原を同定し、ウシ乳房炎のワクチン抗原へと応用することであった。今年度は、黄色ブドウ球菌特異的抗体(抗SA抗体)による増殖抑制効果が、抗体を構成する中で、どのような領域によって引き起こされるかを明らかにした。IgG抗体はFabとFcの2つのフラグメントで構成され、抗体の特異性を決定する領域はFab領域に存在する。そこで、まず、抗SA抗体をFab断片とFc断片に切断するために、Pepsinで処理した。無処理、Buffer置換後(Pepsin処理前)、Pepsin処理後の抗SA抗体をSDS-PAGEに供することで、Pepsin処理により、Fab断片とFc断片に抗体が切断されたことを確認した。次に、黄色ブドウ球菌を植菌した培地中に、抗SA抗体およびPepsin処理後の抗SA抗体を添加し、黄色ブドウ球菌に対する増殖抑制効果を検証した。その結果、Pepsin処理を行っても増殖抑制効果が確認され、抗SA抗体による増殖抑制効果がFab領域によるものであることが示された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Frontiers in Immunology
巻: 11 ページ: 604674-604674
10.3389/fimmu.2020.604674