研究課題
特別研究員奨励費
Pv11細胞は、ネムリユスリカ胚から単離された、乾燥耐性能を有する唯一の動物細胞である。近年我々は、Pv11細胞を用いて、HSFが乾燥耐性に寄与する因子であることを明らかにした。一方で乾燥過程で転写制御を行う新規因子の存在も示唆された。そこで、ゲノムワイドに乾燥耐性に寄与する因子を探索する方法として、STARR-seqに着目した。STARR-seqは、解析対象の全ゲノムを600bp程度に剪断し、レポーターベクターに組み込むことで、ゲノム由来のエンハンサーを網羅的に抽出する方法である。この手法を用いて、ネムリユスリカの乾燥耐性を司る新規転写因子の同定を目指す。
昨年度は、ネムリユスリカの最小プロモーターについて論文化、および最小プロモーターを用いたレポーターベクターをPv11細胞へ導入することで、STARR-seqが行えるかを検討した。Pv11細胞の乾燥処理過程では、heat shock factor 1(HSF1)の発現が上昇し、乾燥耐性に寄与する遺伝子群のプロモーター上のheat shock element(HSE)に結合することで、転写促進を行うことがわかっている。そこで、HSE、最小プロモーターおよびルシフェラーゼを組み込んだ、レポーターベクターを作成した。このベクターをPv11細胞へ導入後、乾燥処理を行い、ルシフェラーゼ活性が上昇するかを検討した。その結果、レポーターベクターを導入する際のエレクトロポーレーションのダメージで、HSF1が活性化し、乾燥処理前からルシフェラーゼの活性が上がってしまった。一過的にレポーターベクター群を導入して行う、従来のSTARR-seqがPv11細胞では適していないことが判明した。したがってSTARR-seqをPv11細胞で行うため、レポーターの発現ユニットの部分を、ゲノム上にあらかじめ挿入したPv11細胞を準備する必要があることが判明した。そこで、乾燥耐性に影響を与えないゲノムの箇所(Safe harbor: SH)を探し出し、そこに発現ユニットを挿入することにした。GFPの発現ユニットがゲノムにランダムに挿入された、かつ、乾燥耐性能を維持しているPv11細胞を用いて、GFPの発現ユニットが挿入されている箇所の特定を行った。その結果、4箇所のSH候補を得た。このSH候補の1箇所に対して、実際にSHとして機能するかを検討した。その結果、SHとして利用できることがわかり、Pv11細胞におけるSHを同定した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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