研究実績の概要 |
研究計画に従い、小細胞肺癌におけるMCL1阻害剤S63845と殺細胞性抗癌剤(シスプラチンおよびエトポシド)の併用効果をDMS114, KTOR201, DMS53, SW1271でCell viability assayで評価したが、併用効果は認めなかった。そのため、方針を転換し、BCL-XLまたはBCL-2の同時阻害による相乗効果について評価することとした。 DMS53およびSW1271はBCL-XLまたはBCL-2を高発現しており、これによりS63845の抵抗性に寄与していると想定した。siRNAを用いてBCL-XLまたはBCL-2をノックダウンすることでS63845の感受性は改善した。BCL-XLおよびBCL-2の阻害剤であるNavitoclaxを用いてS63845の併用効果を前述と同じ手法で評価したところ、すべての細胞株で併用効果を認めた。NavitoclaxはDMS53への有効性がin vivoにおいても報告があることから、DMS53を免疫不全マウス(SCID-beige)に移植したXenograftモデルを用いて、S63845とNavitoclaxの併用効果を評価した。Navitoclax 25 mg/kg以上で併用療法を行ったところ、day4で致死毒性が出現することがわかった。そのためNavitoclax 10 mg/kgに減量し併用効果を確認するも、コントロールと比較して抗腫瘍効果は認めなかった。以上から、S63845とNavitoclaxを用いたMCL1, BCL-XL, BCL-2の包括的阻害は治療効果域が狭く、臨床応用が困難な可能性が示唆された。
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