研究実績の概要 |
本研究では, 任意の標的分子の検出に向けた光干渉型表面応力センサ上への分子吸着界面の構築およびセンシングの実証を目的として, 前半に気相中のガス分子を, 後半に液中の神経伝達物質の検出を可能とするセンサの製作を行い, 各標的分子の検出実験を行った. 前者に関して, 気相中のガス分子吸着時の応答をより高感度に検出するため, 干渉計の狭ギャップ化によるセンサ応答の向上および可動膜材料の低ヤング率化・薄膜化による表面応力感度の向上を図った. また, 新たに分子吸着層として, 低ヤング率材料のpolymethyl methacrylate (PMMA)を導入し, このPMMAおよび可動膜として機能するParyleneの膜厚や分子吸着層の被覆率を最適化することで, 従来構造に対し表面応力感度を2桁以上向上可能な設計とした. 本設計に基づき, 作製した光干渉計は室温環境下で測定可能である最も高感度な半導体センサと同等の検出下限を有しており, 同検出方式のセンサと比較して1素子あたりの面積は150分の1に小型化しつつ, 検出性能は40倍向上していることから, 携帯可能な小型呼気検査装置としての応用が期待できる. 後者に関して, 液中の神経伝達物質を検出するため, 新たに分子吸着層として, 分子インプリント膜を導入した. インプリント材には神経伝達物質のモデル分子としてDopamine(DA)を選択し, 分子インプリント膜内部にDAの鋳型を形成したセンサを製作した. 作製したセンサにおいて, DAを送液した場合とDAを含まないDIWを送液した場合の応答を取得した際, 前者にのみ特異的な応答を取得することに成功しており, 分子インプリント膜により, 濃度数マイクロモル程度の神経伝達物質の検出可能性が示唆された.
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