研究実績の概要 |
乳房外パジェット病(EMPD)37検体をエクソームシーケンス解析を行った。ERBB2増幅・変異の頻度も高いこと, CUX1欠失、KMT2Cの機能喪失型変異の頻度が高いことが明らかとなった。シグネチャー解析ではAPOBEC活性化の証拠が見られた。紫外線ダメージに特徴づけられる一般的な皮膚腫瘍とは異なるメカニズムでEMPDの発がんに至ることが示唆された。 ドライバー変異検出の感度を高めるため、拡大コホートでの研究を行った。パラフィン検体50症例よりDNAを抽出し、エクソームのデータを基に作成したカスタムキャプチャーライブラリを用いてターゲットシーケンスを行った。 ターゲットシーケンスとエクソームシーケンスのデータを結合し、ERBB2変異・増幅, ERBB3変異, FGFR1増幅で半数以上の症例が説明されることが判明した。追加のドライバー変異としてTP53, CDKN2A, CDK12, ZFHX3を同定した。 最後に、免疫染色でERBB2の発現を評価した。結果、ERBB2の増幅と免疫染色の濃染はよく相関するものの、ERBB2の変異と免疫染色の信号の強さには相関がないことが見いだされた。ERBB2の状態を評価するには免疫染色は不十分で、シーケンス解析が望まれることが示唆された。 以上より、EMPDには治療可能なターゲットが半数に存在し、治療選択にあたってはクリニカルシーケンスが有用である可能性が示唆された。本知見は今後の薬剤治験の道を示すものと期待される。
|