研究課題
特別研究員奨励費
本研究は地震に伴う地面の密度変化によって生じる重力場の変動を捉え、地震速報に応用するという研究である。重力場変動は光速で伝播するため従来より素早い速報が可能になるなどのメリットが期待されている。地震のタイムスケールに対応した0.1 Hz程度の重力場変動観測が有効であるため、低周波重力波検出器として開発されてきたねじれ振り子型重力偏差計を転用する。本研究では特に装置の高感度化を目指し、装置の低温化や環境重力場変動の低減などを行う。
ねじれ振り子による重力勾配変動観測に基づいた地震速報の実現を目指し、2019年度はねじれ振り子装置の低温化と地球重力場変動雑音の計測の2点を主に計画していた。そのうち前者の低温化の達成に成功したが、感度不足のため後者の計測実現には至らなかった。その他、ねじれ振り子の地震観測能力を評価するシミュレーションを行った。以下のこれらの詳細を記述する。低温化に関して、前年度までに冷凍機の設置は完了していたため、本年度はまず温度計の増設や外部からの入熱の遮断などを施すことによって冷却環境を整備した。その後ねじれ振り子を冷凍機内部に構築し、調整を行った上で冷却することで6K近くまで低温化した。これにより熱雑音低減に必要な低温化技術の基本的な課題はクリアされた。本年度はさらにねじれ振り子の低温環境における特性を調べるために、磁場変動や温度変動などの環境擾乱を印加しその応答を計測した。その結果、常温に比べて低温下では磁場変動に対する応答が増大する様子が確認され、磁場変動の抑制が不可欠であることが分かった。これら一連の調査によって、先行研究が殆どない低温ねじれ振り子に対して技術実証および高感度化に向けた知見の蓄積が行われた。一方で振り子の回転計測光学系の雑音や前述の磁場雑音によって装置の感度が不足していたために、計画の2点目である地球重力場変動雑音計測の実現には至っておらず、さらなる技術向上が必要である。その他、当初の研究計画には含まれていなかったが、ねじれ振り子にの地震観測能力に関する研究も行った。地震に伴い発生する重力場変動を複数のねじれ振り子からなる観測網で検知したとき、雑音込みのデータから震源位置などのパラメータを推定するシミュレーションを行った。その結果、十分な震源位置決定精度を実現するために必要な検出器の数や配置が導かれ、将来的な観測網の設計に向けた知見を得ることに成功した。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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Classical and Quantum Gravity
巻: 36 号: 12 ページ: 125001-125001
10.1088/1361-6382/ab2162