研究課題
特別研究員奨励費
遺伝性乳がん・卵巣がんの原因遺伝子として知られるがん抑制遺伝子BRCA1/2には、機能が不明な多数の変異体(variant of unknown significance, VUS)が存在し、遺伝子検査の解釈が困難となっている。申請者はBRCA欠損細胞株にBRCA変異体cDNAを導入・安定発現させる簡便な実験系を樹立し、さらにPARP阻害薬への感受性の変化を用いたBRCAのhigh-throughput機能解析法を開発した。本研究は、日々の遺伝子検査で新たに発見される多数のVUSを、この新規実験手法を用いて随時機能解析し、結果を公開し遺伝子検査の信頼性を向上させることを目的とする。
遺伝性乳がん・卵巣がんの原因遺伝子として知られるがん抑制遺伝子BRCA1/2には、機能が不明な多数の変異体(variant of unknown significance, VUS)が存在している。遺伝子検査でVUSが検出された場合、その変異体が良性であるとも病原性があるとも判断できず、治療方針の決定に役立たないばかりか、患者に不安を抱かせることに繋がるため、VUSの存在は遺伝子検査において大きな問題となっている。本研究は、BRCA1/2欠損細胞株に対し、野生型および変異型のBRCA1/2遺伝子を導入して安定発現させ、PARP阻害薬に対する感受性が変化する程度によってその変異体の活性・病原性を判定する手法の開発を目的とした。BRCA遺伝子に対する革新的なハイスループット機能解析手法であるmixed-all-nominated-mutants-in-one method for BRCA: MANO法)を構築し、186種 類のVUSを含むこれまでで最大規模の244種類のバリアントについて機能解析を行った結果、新たに37種類の病的変異体を同定した。さらに本手法の臨床応用例として、遺伝子検査で新たに発見された変異体の病的意義を迅速に判定し、報告するシステムであるAccurate BRCA Companion Diagnostic (ABCD) テストを構築した。本システムは、適切な治療方針が定まらず不安を抱えていたBRCA意義不明変異体保持者に正しい情報を伝えることができることから、発がんリスク低減手術 としての予防的乳腺/卵巣・卵管切除術やPARP阻害薬投与の必要性を判断するためのコンパニオン診断としての活用が期待される。以上の結果を論文として公表した(DOI : 10.1038/s41467-020-16141-8)。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Communications
巻: 11 号: 1 ページ: 2573-2573
10.1038/s41467-020-16141-8