研究課題
特別研究員奨励費
中性子星は太陽と同程度の質量にも関わらず、大きさが20km程度であり、極度に大きい密度、磁場、重力をもつ。中性子星はその強い重力により、太陽のような他の星(恒星)の周りを回り、恒星の一部をはぎ取り、X線で明るく輝く。中性子星が発見されて50年以上になるが、どのようにして恒星の一部が中性子星に落下するのか、どのようにしてその落下物がX線を出すのか、中性子星がもつ磁場の構造等、ほとんど分かっていない。我々は、光がもつ情報である「明るさ」と「色」に加えて、光の波の性質である「偏光」を観測することの出来る検出器を、世界最高レベルの感度で開発した。この検出器で中性子星を観測し、中性子星の謎に迫る。
中性子星は、太陽と同程度の質量を持ちながら、その半径が約10km程度と非常に密度の高い天体である。また、1万~1000億テスラにも達する強い磁場を持ち、それによって生成される異方性を持った放射は、天体の自転によって、パルス状のX線放射を生み出す。これらのことから中性子星は、地上では実現できない強重力場、高密度、強磁場等の極限環境を兼ね揃えた、最適の実験施設と言える。一方で、なぜ中性子星が強い磁場を持つのか、そしてその磁場が7桁にも及ぶ分布をしている理由は、まだ分かっていない。この謎に強力にアプローチできるのがX線偏光観測であり、2021年末に打ち上げられたX線偏光観測衛星:IXPEに期待が高まる。我々は、この偏光観測と相補的に、従来の衛星アーカイブデータ解析に新たな理論モデルを追加することによって、中性子星の磁場進化の解明を目指している。本研究では、他の恒星のガスを中性子星が重力的に吸い込むことによってX線を放出する、降着型中性子星連星:IGR J00370+6122に着目した。本天体は非常に光度が暗く、スピン周期が遅い(346秒)ことで知られている。今回新たに、XMM-Newton, Suzaku, Swift, INTEGRAL, RXTE衛星のデータを総合的に解析した結果、本天体は、先行研究で報告された2倍のスピン周期(674秒)を持ち、連星の近星点と遠星点でのX線光度の差は、毎周期で定常的に3桁にも及んだ。この非常に遅いスピン周期と3桁の光度変動は、強磁場によって降着が阻害されると同時に、降着物によって中性子星の角運動量が奪われることによって生じていると解釈すれば説明がつく。このことから計算した磁場は1000億テスラにも及び、この磁場強度を持つ降着型中性子星は、未だ数例しか報告がない。この結果については、査読論文に投稿するとともに、天文学会でも発表を行った。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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