研究実績の概要 |
将来的にCO2フリーの水素社会を実現するため、固体高分子形燃料電池(PEFC)のカソード(空気極)での酸素還元反応(Oxygen Reduction Reaction:ORR)と固体高分子形水電解(PEWE)のカソード(水素極)での水素発生反応(Hydrogen Evolution Reaction:HER)の2つに対して研究を行った。 現在実用化されているPtやPt合金のナノ粒子表面は(111),(100),(110)の基本低指数面から構成されている。特に(111)面においてORR活性のCo組成依存性は著しく大きい事が見出されている。よって本研究では、バルクCo組成を変化させたPt-Co(111)面に対して、多角的な解析をすることによってORR活性向上因子を明らかにした。今回の研究によって、水素熱処理後のPt3Co(111)電極のみ特異的な表面構造を取っていることが初めて明らかとなった。ORR活性もバルクCo組成ではなく、表面第2層目のCo組成に依存することも明らかにした。すなわち、Pt3Co(111)電極は特異的な表面構造により極めて高いORR活性が発現している可能性が示唆された。これより次世代のPEFCカソード触媒における合金表面構造制御という重要な設計指針を明確に示すことが出来た。 Pt-Co合金ナノ粒子触媒は、HERに対しても高い活性が期待できる。低Pt量で高いHER活性を有する次世代ナノ合金触媒の設計指針を明確にする目的で、まず、HER活性に対する表面原子配列の効果を調べた。これまでに表面構造も明らかにしてきたPt3Co(111),(100),(110)単結晶を用いて水素飽和電解液においてHER活性を初めて測定した。さらにDFT計算と連携して、水素原子の吸着エネルギーに対する表面原子配列とその直下層の合金組成の効果を調べ、HER機構を明らかにした。
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