研究課題
特別研究員奨励費
イネが生産する特化代謝産物モミラクトン (ML) は植物の生育阻害活性や抗菌活性を有し、イネの化学防御に重要な役割を果たす。しかし、MLの作用機序に関する知見は殆ど無く、MLの構造活性相関も明らかでない。そこで本研究では、真核細胞のモデルである分裂酵母を用いた化学遺伝学的手法と、MLを官能基非依存的に固定したプローブを用いた生化学的手法を組み合わせ、MLの標的経路や標的分子、さらにはMLに対する耐性機構について網羅的に解析する。
今年度はモミラクトン (ML) の生物活性と耐性のメカニズム解明を目的に①化学遺伝学的手法による標的パスウェイの解明と②作用機序解明のツールとしてのMLプローブの作製を目指した。各項目の研究実績を概説する。①昨年度、分裂酵母遺伝子破壊株ライブラリーのMLB感受性プロファイリングを試験的に行った。今年度はサンプル数などを増やし、より確かなプロファイルを取得した。その結果、MLBの作用への微小管とセプタム形成の関与が疑われたため、これらの局在観察を行った結果、MLBによって細胞頂端での微小管の歪曲や、マルチセプタムの形成が誘導された。また、翻訳やその品質管理もMLの新たな標的候補である可能性が示唆されており、その実証は今後の課題である。また、昨年度発見した、ATP合成酵素サブユニットの破壊株がMLB耐性を示す現象を更に解析し、MLB感受性と呼吸活性に正の相関があることを明らかにした。そこで、MLBが細胞内のROSレベルに与える影響を調べたところ、驚くべきことに、MLBはROSレベルを大きく低下させた。近年、ROSは様々な生命現象に関与するシグナル分子として機能することが報告されていることから、適量のROSは生存に必須であることが予想される。MLはROSを至適レベル以下に低下させることで生育を阻害している可能性がある。ROSレベルを低下させることで生育を阻害する化合物の報告は殆どなく、MLは非常にユニークな作用を示す化合物であることが予想された。②MLの構造活性相関研究を行い、適切なプローブ化の方法を検討した。いくつかのML誘導体を合成し、誘導体の抗真菌活性とアレロパシー活性を評価したところ、いずれも抗真菌活性が大幅に低下していたものの、アレロパシー活性が維持された誘導体が存在しており、MLが持つ抗菌活性とアレロパシー活性では活性の発揮に重要な部位が異なっていることが示唆された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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G3 (Bethesda)
巻: 11 号: 8
10.1093/g3journal/jkab156
Proc Natl Acad Sci USA
巻: Online ahead of print 号: 22 ページ: 12472-12480
10.1073/pnas.1914373117