研究課題
特別研究員奨励費
犬ジステンパーウイルス(CDV)の感染性クローンを作製し、ヘマグルチニン蛋白の変異やCDV株間の差異による様々な宿主細胞株への感染能、増殖性を比較解析することで病原性を明らかにする。また、CDVのリンパ球への高い感染能を保持したミニゲノム内包ウイルスを作製し、目的の蛋白を発現させ細胞死を誘導させる。これにより世界初のリンパ球への遺伝子導入法を確立し、H蛋白に変異を加え、リンパ腫への特異性を高めることにより、悪性リンパ腫の安全な特異的治療法を確立する。
昨年に確立したイヌジステンパーウイルス(CDV)のリバースジェネティクス系を応用させ、ウイルスベクターとして細胞への遺伝子導入を試みた。始めに、CDVのウイルスゲノム内全ORFの欠損体作製を試みた。T7プロモーター、ハンマーヘッド型リボザイム、D型肝炎ウイルスリボザイムおよびT7ターミネーターを含むプラスミドベクターにCDVの5'UTRと3'UTR間にEGFP発現遺伝子をクローニングした。得られたプラスミドをCAGプロモーターによる全CDV蛋白発現プラスミドと共にBHK/T7-9細胞へトランスフェクションし、培養上清を回収した。その後、培養上清をA72/cSLAM細胞へと接種し、EGFP蛋白の蛍光を観察した。結果、EGFPのシグナルは得られなかった。パラミクソウイルス科は各ORFの上流UTRにあるgene start(GS)、下流UTRにあるgene end(GE)と呼ばれるシグナル配列を認識してウイルスポリメラーゼが転写を開始、終止することが知られている。本実験ではGSはCDV N遺伝子のものであり、GEはCDV L遺伝子のものであったため、転写が行われなかったと考えられた。そこで、GEの配列をN遺伝子のものに置換したプラスミドを作製し、同様の実験を行ったが、EGFPのシグナルは得られなかった。GS、GEの配列の組み合わせやCDVのパッケージングシグナル配列の欠如が原因と考えられた。次にH遺伝子欠損CDVの作製を試みた。H遺伝子をEGFP遺伝子に置換したCDVゲノムを感染性粒子作製と同様の手法に加え、H蛋白を過剰発現させ実施したが、EGFPのシグナルは得られなかった。しかしながら、上清を用いたウエスタンブロットによる抗原検出ではF蛋白が検出されたため、EGFP遺伝子が発現していないことが考えられた。上述のGS、GEやコドンの最適化などが改善点として挙げられる。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Transboundary and Emerging Diseases
巻: - 号: 2 ページ: 913-918
10.1111/tbed.14042
Emerging infectious diseases
巻: 27 号: 4 ページ: 1068-1076
10.3201/eid2704.204148