研究課題/領域番号 |
19J20400
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
波多野 瞭 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2021年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2020年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2019年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | トマス・アクィナス / 教会 / 秘跡 / 中世哲学 / 思想史 / 西洋中世 / キリスト教 / 西洋思想史 / 制度 / 共同体 / 権能 / 聖職者 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、西洋中世最大の哲学者・キリスト教神学者として知られるトマス・アクィナス(1225頃~1274)が展開した、「教会」の制度としての側面に関する思想を明らかにすることを目指す。教会の諸構成員に与えられる身分と行為に関連する概念・問題を巡る対立の文脈から、複数の問題系を貫くトマス(と同時代人)の教会観を明らかにすることを目指す。この作業は直接的には、権威化されがちなトマスを歴史的文脈に置き直し、西洋中世の政治史上の抗争の理論的背景を明確にすることに関わる。広く言って政治・宗教的な共同体の構成原理に関わるため、現代社会において重要な問題であるライシテや宗教間対話に関し新たな視座を与えうる。
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研究実績の概要 |
13世紀中葉の秘跡論において、「権能(potestas)」は、聖体の秘跡の執行とこれに関連する諸職務を可能たらしめるものとされる。この「権能」概念に関しては、権能がなくとも執行しうる職務が多数あり、では権能は何のためのものか、という問いがあった。この問題はトマス・アクィナスにおいて一層際立つ。何故ならトマスは、特定の秘跡において受け取る霊印を「能力」ないし「権能」と同一視することで、聖職者のみならずあらゆる信徒の諸行為も「権能」と対応させる、つまり権能概念のカヴァーする範囲を拡張するからである。 今年度はこの点につき、ロンバルドゥスの『命題集』第4巻の諸註解、及びトマスの『神学大全』第3部の秘跡論を中心に検討した。権能なしで可能に見える行為にそれでも権能が必要である、ということを弁証する際、神学者らは権能が「職務として(ex officio)」行為に及ぶのに必要だと簡潔に述べ、「職務として」何かをなすことは権能という実在的支えなしに不可能だという前提を明らかにしている。トマスはさらに、霊印が純粋な能力でなく「道具的」な能力であるという留保を加えつつ、神の道具としての地位において特定の行為に及ぶことは(単にその行為を実施することとは異なり)道具的能力つまり霊印なしに不可能である、とする。まとめるなら、単なる行為と職務ゆえの(道具としての)行為は区分され、権能は両者ないし少なくとも後者を可能たらしめるものであり、行為が実在的能力を根拠とするのと同じく教会内の身分(やそれに対する承認)も(霊印や権能という)実在的な根拠を前提する。 これらの点を明らかにしたことが概ね今年度の実績である。この点はトマスの秘跡論全体の特徴でもある「道具」の概念の理解にも資すと考えられる。さらに、秘跡論との接続のもとに論じられることの少なかった高位聖職者の「職務(officium)」との関連も検討されうる。
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現在までの達成度 (段落) |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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