配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2021年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2020年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2019年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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研究開始時の研究の概要 |
本研究は、コウモリ類のエコーロケーションの進化的起源に関する以下の仮説:①コウモリ類共通祖先がエコーロケーションを獲得しており、現生のオオコウモリ科において失われたとする「単一起源説」,②現生のキクガシラコウモリ上科,ヤンゴコウモリ類において独立に 獲得されたとする「収斂進化説」の2仮説の検証を行う。一般に,コウモリ類の超音波発信様式は、A. 口内発信, B. 鼻孔発信, C. 舌発信の3タイプに分けられる。本研究では,これまで着眼されてこなかったエコーロケーションに用いられる'超音波器官'である咽頭および内耳の形成過程をこの3グループ間で比較し,エコーロケーションの進化的起源の解明を目指す.
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研究実績の概要 |
今年度はコウモリ類の喉頭形態形成を中心とした解析を行った。超音波を口腔から発信する9種, 鼻腔から発信するキクガシラコウモリ類12種, ヘラコウモリ科4種, 喉頭による超音波発信能をもたないオオコウモリ類7種, コウモリ類以外の哺乳類(外群)5種の骨CTデータをもとに, 舌骨, 軟骨の結晶化過程の記載を行い, 比較分析を行った.結果, オオコウモリ類の喉頭の結晶化過程は外群のものと質的な類似がみられた一方, 口腔発信する種と鼻腔発信するキクガシラコウモリ類の間で喉頭軟骨・舌骨要素に形態学的な差異がみられた. 一方, ヘラコウモリ類については, 鍵となる出生直前のステージの胚が不足しており, 形態形成過程を詳細に記載することは現状では困難であると判断した. そのためヘラコウモリ類に関しては今後の課題として次年度から別途サンプリング計画を立案することとし, 現在はその他のコウモリ類系統における喉頭の発生比較結果をまとめて論文執筆にあたっている. こうした喉頭の胎子期発生における結果と前年度までの内耳・舌骨・鼓室輪の形態形成の比較分析結果とを併せると, これまでに類例のない解像度でコウモリ類の超音波能力の進化史にアプローチできたのは間違いない.これら一連の研究結果は, これまで音声受信器官である内耳にフォーカスを当てて解析が試みられてきたコウモリ類の超音波能力の進化機構を読み解く上での新たな視点をもたらすものであり, コウモリ類だけでなく多様な哺乳類種の喉頭による音声利用の多様性進化プロセスを紐解くための基盤的知見となる.
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