研究課題
特別研究員奨励費
中生代白亜紀中ごろに発生した海洋無酸素事変(OAE)1bは白亜紀で最大の浮遊性有孔虫の絶滅をもたらした大規模な海洋の貧酸素化イベントである。近年の研究でOAE1bと大規模火成活動との関連が議論されているが、いまだ確たる証拠は得られていない。本研究では海中火成活動の指標となる堆積岩中のオスミウム(Os)同位体比を用いてOAE1bと大規模火成活動との関連を議論する。
本年度では、白亜紀前期Hauterivianの堆積岩を用いて古海水のOs同位体比の復元を行った。これにより白亜紀中期を網羅する海洋Os同位体比層序の復元を完了した。得られた結果から、Early Aptian, Albian, CenomanianにOs同位体比が急激にマントルの値に近づくことが判明した。これはこの時期に巨大火成岩岩石区(large igneous provinces)形成に伴う大規模な海底火山活動が存在していたことを示唆している。またそのうちのいくつかは海洋の貧酸素化に対応していることが判明した。これらの結果から白亜紀中期の海洋無酸素事変には火山活動に関連する比較的グローバルなものと、モンスーン強度の変化に伴うローカルな海洋酸化還元状態の変化の2種類あることが示唆された。また、白亜紀中期の寒冷期(アプチアン)には熱水活動が強く、温暖期(セノマニアン)には弱かったことが判明した。このことは熱水活動とそれに引き続く二酸化炭素の放出が白亜紀中期の温暖化を引き起こしたとする説に異を唱えるものである。この時期には環太平洋や、高緯度陸上域での火山活動が多発していたことから、陸上火山活動が白亜紀の温暖化の原因である可能性が高いと結論付けた。また白亜紀前期のHauterivianには40万年の離心率に応じて海水のOs同位体比が大きく変動していることが判明した。この結果は離心率に応じたモンスーン活動の変化に応じて大陸風化強度が変化していた可能性が示唆された。これまで得られた結果をまとめ、複数の学会発表・国際誌へ投稿を行い受理された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2022 2021 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Nature Communications
巻: 13 号: 1 ページ: 1-9
10.1038/s41467-021-27817-0
Geochemistry, Geophysics, Geosystems
巻: 22 号: 12
10.1029/2021gc009789
Scientific Reports
巻: 10 号: 1 ページ: 1-10
10.1038/s41598-020-69505-x