研究実績の概要 |
本研究は、腸内細菌、特にビフィズス菌が持つ植物性多糖分解酵素に着目し、その増殖メカニズムやビフィズス菌間の共生関係を解明することを目的としている。ビフィズス菌Bifidobacterium longum (B. longum) が有するアラビノガラクタン・プロテイン(AGP)分解酵素群のうち、アラビアガム由来のAGPの側鎖末端に存在するGal-α1,3-Ara (GA) を切断する3-O-α-D-galactopyranosyl-α-L-arabinofuranosidase (GAfase)と、同遺伝子クラスター上の隣接するGH36α-galactosidaseは既に解析済みである。また、昨年度までに、α-L-arabinofuranosidase (BLLJ_1850) とexo-β1,3-galactanase (BLLJ_1840) が協調的にアラビアガム分解に関わることを見出した。本年度では、BLLJ_1850がGH43_22、GH43_34の2つの触媒ドメインを有するマルチドメインの酵素であることに着目し、各触媒ドメインの機能を明らかにした。その結果、GH43_22はα1,3-Araf、GH43_34はα1,4-Arafの切断を担うことが分かった。どちらの結合様式のα-L-Arafもアラビアガムの側鎖末端に存在する構造であり、特にGH43_34ドメインがGAfase作用後のアラビアガムからのAraの遊離に大きく関わっていることが分かった。また、B. longumによるアラビアガムの最終産物として残存するRha-α1,4-GlcA-β1,6-Gal-β1,6-Galは、他の腸内共生細菌であるBacteroides vulgatusによって利用されることを見出し、腸内細菌間での共生関係を明らかにした。
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