研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、太陽風に含まれる重イオンが 10地球半径以上に広がる希薄な超高層大気の中性物質と起こす電荷交換X線発光を、月付近の探査衛星から従来にない俯瞰的・広視野観測で捉え、発光の空間分布や時間変化を把握することで、宇宙で普遍的な電荷交換反応の理解を深め、太陽風に対する磁気圏の振る舞いや流出大気の分布を調べる惑星科学の新たな手段として確立することである。そのために私は、(1) 探査衛星に搭載できる独自の超軽量X線望遠鏡の製作と宇宙実証を行い、(2) 日本のX線天文衛星「すざく」と 欧 XMM-Newton 衛星の全公開データを活用した 3次元的な地球周辺のX線発光モデルを構築する。
本研究は、地球磁気圏に付随した電荷交換X線放射の理解と太陽惑星系科学への発展を目的として、月付近の探査衛星を用いた俯瞰的かつ広視野の将来観測に向けた独自の超軽量X線望遠鏡の開発および既存の天文衛星データにもとづく高精度発光予測モデルの構築を行うものである。望遠鏡開発では、これまでに最適化してきた製作プロセスをもとに EM 相当の望遠鏡コンポーネントを試作し、微動台を用いた精密アライメント装置で組み立て、ハウジングに取り付けるための固定リングへの接着作業まで行った。一通り完遂したのは初である。打ち上げ後に望遠鏡や接着材が晒される熱・放射線量を見積もり、それらを模擬した環境試験を行い、必要な環境耐性も確かめた。関連する成果は投稿論文や学会発表としてまとめており、2024-25 年頃 (太陽活動極大) に打ち上げを目指す GEO-X 衛星に向けて着実に成果を上げた。発光モデル構築では、地球磁気圏の太陽風応答や外圏大気の経験モデルを組み合わせ、リアルタイム太陽風データを用いた独自の地球周辺における電荷交換X線放射シミュレーションコードを開発した。「すざく」や XMM-Newton 衛星の系統解析で得られた発光イベントデータベースと比較した結果、ファクタ 2 程度の高精度予測を達成した。本モデルは、衛星の地球周回に伴う視線変化で生じる突発的な強度変動も再現できており、あらゆる天文観測のノイズ予測に使えるだけでなく、GEO-X 衛星の観測予測にも寄与するため、まさに画期的である。同様に関連する成果は学会発表を行い、投稿論文および博士論文としてまとめた。海外最大規模のオンラインニュースサイト EurekAlert! に本研究の紹介記事を掲載した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022 2021 2020 2019
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (55件) (うち国際学会 19件、 招待講演 1件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 75 号: 1 ページ: 128-152
10.1093/pasj/psac095
Optics Express
巻: 30 号: 14 ページ: 25195-25207
10.1364/oe.459774
Proc. SPIE (Space Telescopes and Instrumentation 2022: Ultraviolet to Gamma Ray)
巻: 12181 ページ: 100-100
10.1117/12.2629635
Proceedings of SPIE
巻: 12181 ページ: 245-245
10.1117/12.2630501
巻: 12181 ページ: 152-152
10.1117/12.2631464
巻: - 号: 3 ページ: 1-15
10.1093/pasj/psab015
Applied Physics Express
巻: 13 号: 8 ページ: 087001-087001
10.35848/1882-0786/aba7a5
Journal of Astronomical Telescopes, Instruments, and Systems
巻: 6 号: 02 ページ: 025003-025003
10.1117/1.jatis.6.2.025003
Proc. SPIE (Space Telescopes and Instrumentation 2020: Ultraviolet to Gamma Ray)
巻: 11444 ページ: 82-82
10.1117/12.2560427
Applied Optics
巻: 58 号: 19 ページ: 5240-5240
10.1364/ao.58.005240