研究課題/領域番号 |
19J21115
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯塚 舜 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
2021年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2020年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2019年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | ヒューム / 認識論 / 信頼性主義 / 阻却事由 / 暴露論証 / C. I. ルイス / 虚構主義 / 因果 / 抽象 / 懐疑論 |
研究開始時の研究の概要 |
『人間本性論』におけるヒュームの理論哲学を、虚構主義を打ち出す先駆的な議論として再解釈する。対象とするのは観念説経験論と呼ばれる方法論と、とりわけユニークな議論と評価される因果論である。 本研究は2つの部分から成る。一つは、伝統的に懐疑論として理解されてきた因果論を虚構の積極的な側面を論じたものと解釈し、虚構を可能にする枠組みを与える方法論と併せて歴史的に再構成することである。もう一つは、ヒュームの言う虚構が、対象を文字通りではない何かとして扱うという構造を持つ点で現代の「解釈的虚構主義」に通じる点に着目し、彼の因果論及び方法論を現代においてなお魅力的な議論として合理的に再構成することである。
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研究実績の概要 |
一昨年度の研究ではヒュームの因果論を認識論の観点から検討し、彼の提示する信念形成プロセスの心理学的説明が、懐疑的結論を導く暴露論証の一部を成していると論じた。暴露論証の前提には、信頼性主義をはじめとする認識的正当化に関する外在主義と、ひとたび獲得された正当化が失われる「阻却」と呼ばれる現象の存在がある。 これを受けて本年度は、特に阻却事由の関係を中心として昨年度に引き続き信頼性主義を検討する研究を行うとともに、メタ倫理学における暴露論証に関わる研究も発表した。前者についての主たる成果は、2021年10月31日にオンラインで開催された哲学会第60回研究発表大会にて発表した「信念的・規範的阻却事由と信頼性主義」である。この報告では、規範的阻却事由と信念的阻却事由を区別する観点から、信頼性主義はどのようなタイプの阻却事由をどのように説明すべきかを検討した。他方で、暴露論証について議論が交わされているのは主にメタ倫理学の分野においてである。そこで、2022年3月に刊行の『論集』第40巻に掲載された論文「C. I. ルイスのメタ倫理学と「善き生(good life)」―認知主義・自然主義的実在論から規範倫理へ」では、プラグマティズムの哲学者C. I. ルイスの仕事を手がかりとして、自然主義の立場からメタ倫理学における暴露論証をどう扱えるかを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究がおおむね順調に進展していると評価できる主たる理由は、ヒュームの理論哲学を合理的に再構成する予備段階として、しばしば彼に帰される立場である信頼性主義に関する現代的な議論を参照し、特に阻却事由との関係について一定の洞察が得られた点である。これは、ヒュームの認識論を信頼性主義として、彼の議論をある種の暴露論証として解釈することを試みるとき、解釈され直された彼の議論の妥当性を検討する上で、議論の土台となることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
さしあたりは、引き続き信頼性主義と阻却事由の関係の検討を行う。特に、阻却事由不在条件を組み込んだバージョンの信頼性主義に対して指摘される無限後退の問題を解決するアイデアを2022年5月21日開催の日本哲学会第81回大会で発表する予定である。またこの発表を含め、各学会で報告した内容を論文の形でも公開することを目指す。 さらに今年度からの積み残しとして、L. E. LoebやF. Schmittらの、ヒュームを信頼性主義者として解釈する研究を参照し、これまでに得られた現代の議論に関する知見を踏まえつつ、ヒューム的な信頼性主義と現代の信頼性主義の異同を見定め、彼の認識論上の見解の特徴を明らかにするとともに、因果論における彼の論証との関係を問うことが今後の課題となる。
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