研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、独立社外取締役がどのようにして企業業績に影響を与えるかを分析することで、これまで日本のみならず各国で行われてきた取締役会改革の政策評価を行うことである。これまでの研究では、独立社外取締役が企業業績に影響を与えることは示されてきたが、正負どちらの影響を持つかは国ごとに異なり、またどのようなメカニズムを通じて影響を与えているかは明らかとなっていない。本研究では、取締役会の機能分析とその国際比較を通じて、近年日本で行われている企業統治改革が意図した帰結をもたらすものであるかを明らかにすることを目的とする。
研究課題「取締役会の独立性が企業業績・企業行動に与える影響」に対して、2021年度は主に以下の3つに取り組んだ。第1に、2020年度に行った研究のブラッシュアップである。2020年度時点では大きく(1)企業間で取締役の兼任という形でコネクションが確認された場合でも、企業間の行動に対して類似性は確認されないこと、(2)企業間で財の取引を行うという形でコネクションが確認された場合、このコネクションを通じて金融ショックが波及すること、(3)取締役の兼任というコネクションは、金融ショックの波及の経路とはならないことを確認した。2021年度は上記の結果から特に(2)に焦点を当てて論文としてまとめた。本論文は国内学会で報告した後、査読付き雑誌へと投稿を行った。第2に、企業の経営の質が企業の取引関係のマネジメントにどのような影響を与えるかについて分析を行った。分析の結果、企業の経営の質が高い企業ほど、頻繁に取引相手を入れ替える・取引相手を入れ替える必要が生じた際に新規の取引相手企業の探索が容易である等、取引関係のマネジメントが優れていることを確認した。本分析は企業経営の質の向上が、企業の生産活動に与える影響を明らかにしたという点で、近年のコーポレートガバナンス改革等を通じた企業のマネジメントの変化と企業行動の関係について示唆を与えるものと考えられる。本分析の結果を論文としてまとめた後、国内学会での報告を行った。第3に、当初の予定通り、広く社会への還元を図るため、これまでの研究成果を学位論文としてまとめた。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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金融経済研究
巻: 第45号