研究課題/領域番号 |
19J21205
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分37030:ケミカルバイオロジー関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 恭平 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2021年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2020年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2019年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 蛍光プローブ / SARS-CoV-2 / FRET型蛍光プローブ / Tetrazine Click反応 / グルタチオン / 機能性色素 / 分子イメージング / 感染症 / 診断 / グリコシダーゼ / プロドラッグ / 癌 / 乳癌 / イメージング |
研究開始時の研究の概要 |
現在感染症治療の現場において原因菌の特定には数日を要する為、救急医は迅速な治療法の選択を行う事が難しい。本研究では、特定の酵素活性を光らせる事により検出する「蛍光プローブ」と呼ばれる試薬群の開発を行い、これを利用して細菌種特異的な酵素の活性を探索すると共に、特定の急がれる菌種を数分以内に検出、識別できる蛍光プローブを見出す事を目指す。 また治療としての抗菌剤へも着目し、見出された特異的な酵素活性を利用する事で、特定の細菌種だけに薬効を示す副作用の少ない新規抗菌剤の開発を併せて達成する。開発した蛍光プローブ群は癌などのその他の疾患に関係する酵素活性、治療標的の探索へも応用し医療への貢献を目指す。
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研究実績の概要 |
1.感染症迅速検出蛍光プローブの開発 これまでに細菌種や癌細胞・癌組織のグリコシダーゼ活性を分子内スピロ環化反応を基盤とした蛍光プローブ群を開発する事で網羅的に評価し、その迅速診断を可能とする蛍光プローブを見出してきた。昨年度はウイルスへ焦点を置き、SARS-CoV-2由来のプロテアーゼであるMproに着目し、上記の分子内スピロ環化反応を蛍光制御原理とする蛍光プローブの開発戦略を利用して発現系のSARS-CoV-2 Mpro活性をin vitroで高感度に検出可能な蛍光プローブの開発に新たに成功した。今後、これらの分子内スピロ環化反応を基盤とする蛍光プローブ戦略を感染細胞の迅速検出に応用できる可能性が期待される。
2.Tetrazine Click反応を用いたFRET型蛍光プローブの細胞内合成 一般的に2波長の色素を用いたFRET型プローブは溶解性が乏しく、細胞内への導入が困難である。当教室が開発してきたグルタチオン濃度変化を可逆的かつ定量的に検出可能なプローブQG3.0は、グルタチオン応答性の蛍光団とグルタチオン非応答性の蛍光団からなるプローブであるが、細胞内に導入する際に溶解補助剤が必要であり細胞膜への吸着が問題であった。昨年度は上記の課題を解決すべく、Tetrazine Click反応でFRET型蛍光プローブを細胞内構築する戦略を考え、その検証を行った。具体的には、緑色及び赤色色素に対して、Tz基とTCO基をそれぞれ標識した色素群を合成し、in vitroでClick反応の評価を行ったところ、FRETプローブ自体を構築する色素ペアを見出す事に成功した。一方で、2色素間の化学構造的な長さや角度がFRETプローブのグルタチオン応答性に大きく影響する事も明らかとなった。今後、2色素間の長さや角度を調整する事で細胞内でグルタチオン応答性のFRETプローブを構築する事が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度は、殆ど未知の感染症であったSARS-CoV-2に対して、申請者が細菌種や癌細胞で研究を行ってきた蛍光プローブの診断戦略を適用し、in vitroで発現系のSARS-CoV-2由来のプロテアーゼであるMproの活性を高感度に蛍光検出可能な蛍光プローブの開発に成功した。今後、昨年度の成果を元にSARS-CoV-2感染細胞の感染状況を診断可能な蛍光プローブの開発が期待できる。 また、Tetrazine Click反応でグルタチオン応答性の蛍光プローブをin vitroで構築する事にも成功し、新たなFRET型蛍光プローブの開発戦略の足がかりとなる知見を得る事ができた。今後、昨年度の成果を元に細胞内で効率よくグルタチオン応答性の蛍光プローブを構築し、生細胞の細胞質におけるグルタチオン濃度を可視化する事が大いに期待できる。
上記の成果を考えると、感染症分野や基礎科学的な分子イメージング分野における新たな技術や知見、戦略を見出す事ができた為、当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
1.感染症迅速検出蛍光プローブの開発 感染度合い(MOI)やプローブ濃度等の条件を再調整し、SARS-CoV-2感染細胞と非感染細胞でのMpro活性のLive Cellイメージングを試みる実験を実施する。また、感染細胞ではウイルスの感染により通常とは異なる細胞内環境が予想され、その他の酵素活性についても差異が生じている可能性が高い。今後、昨年度に開発したMproを標的とした蛍光プローブに加え、これまでに開発してきたグリコシダーゼ活性検出蛍光プローブ群などと合わせてウイルス感染細胞における標的バイオマーカー酵素の探索とそれに基づく診断法・治療法の開発を目指す予定である。
2.Tetrazine Click反応を用いたFRET型蛍光プローブの細胞内合成 昨年度、グルタチオン応答性のFRET型蛍光プローブ自体をin vitroで構築する事に成功した一方、FRETドナーとFRETアクセプターの2色素間の化学構造的な長さや角度がFRETプローブの性能に大きく影響する事が明らかとなった。具体的には、2色素間の長さが離れすぎていると、分子構造的な回転により2色素が近接してスタッキングが生じ、その結果グルタチオン応答性の蛍光団側の蛍光が減弱してしまいFRETプローブとしての機能に影響が出ている事が疑われた。今後、昨年度の検討で課題となったTetrazine基及びTCO基と各蛍光団までの長さ・2色素の角度などの点を分子構造的に改善する事により、FRET効率の高い分子構造や条件を見出す事で、脂溶性の高いFRET蛍光プローブをTetrazine Click反応で細胞内合成する戦略の実現を目指す予定である。
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