研究課題
特別研究員奨励費
本研究の概要は、スイッチ部分に相変化材料を用いた低消費電力なWSSの実現である。相変化材料はCDやDVDなどの光ディスクに用いられる不揮発性を持つ材料である。室温で安定な2つの相状態を持ち、加熱条件を変えることで相間を行き来することができる。それぞれの相状態は異なる屈折率を持つため、相変化を利用することでスイッチング状態の維持に電力が不要な低消費電力WSSが可能になる。相変化を利用した光スイッチはシリコン光回路上に相変化材料を集積することで実現される。他ポート化を容易にするため、波長合分波素子には自由空間工学系の回折格子を用い、ハイブリット構成のWSSを作製する。
令和2年度は、低消費電力で高速な波長選択光スイッチ(WSS: Wavelength Selective Switch)の実現に向け、1)20チャネル 2 × 2 ハイブリッドWSSのレンズ系設計、2)石英アレイ導波路回折格子 (AWG: Arrayed Waveguide Grating)を用いたハイブリッドWSSの伝送実験、3) シリコン集積型WSSの新規設計や動作実証を行った。1)前年度に作製したシリコン光回路を用いた、200 GHz間隔20チャネル2×2 ハイブリッドWSSの自由空間光学系の設計を行った。さらに設計した構成において数値解析を行い、チャネル波長での平均挿入損失12.1 dB、最小消光比66.3 dBの特性を得た。2)作製したシリコン光回路の特性やハイブリッド構成での光結合方法を確認するため、波長合波器に石英AWGを採用してWSSを構成し、10Gbpsの光変調信号の符号誤り率評価を行った。実験結果については査読付き論文誌に投稿予定である。3)ハイブリッド型WSSに加えてシリコン光回路の拡張性の高さを示すため、200GHz間隔16チャネル1×4 波面制御型WSSの設計・試作を行った。波面制御構成は損失の原因となる導波路交差を含まない構成である。チップサイズは5 mm×10 mmと小型であり、数値解析においてチャネル波長での平均損失8.6 dB、 平均消光比35.7 dB、最大クロストーク-31.4 dBの特性を得た。さらに、作製した200 GHz間隔 20チャネル 1×2 Fold-back型WSSの動作確認を行った。Fold-back型は導波路交差を低減した構成である。平均消光比10.9 dBでの動作検証に成功し、実験結果に加えて動作原理や設計方法、拡張性について査読付き論文誌Journal of Lightwave Technologyに掲載されている。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Journal of Lightwave Technology
巻: 39 号: 8 ページ: 2413-2420
10.1109/jlt.2020.3048585
Optics Express
巻: 28 号: 6 ページ: 8949-8958
10.1364/oe.388759